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蒟蒻の花 |
蒟蒻を食べるためには、アルカリ処理をして毒性を抜かなければなりません。実に手間がかかります。蒟蒻芋は、粉にしてから水を入れてこね、そこに消石灰などの水酸化カルシウム、あるいは炭酸ナトリウムなどの水溶液を加え、煮沸して固め、はじめてこんにゃくになります。中国や東南アジアでも、同じ方法がとられます。動物がこんなことをするわけもなく、蒟蒻を食べるのは人間だけだそうです。蒟蒻の原産地はインド、あるいはインドシナ半島とされ、日本には、中国経由でもたらされたようです。鎌倉時代には、精進料理として定着し、そこから一般に広がったようです。寺院から一般へという典型的パターンです。
それにしても、何故、これほど手間のかかる代物を食べるようになったのでしょうか。しかも味がないわけで、一層、謎は深まります。試行錯誤を重ねた結果だったとは思えません。試行錯誤は、ある程度、到達点がイメージできていなければ行われません。恐らく、何らかの偶然が、アルカリ処理を発見させたのでしょう。発見した人に、発見の経緯を聞いてみたいものです。よほど空腹だったのでしょうか。こんにゃくは、味も無く、低カロリーですが、空腹は満たされます。逆に言えば、ダイエットにはもってこい、ということになります。現代病には最適でも、カロリーを必要としていた古代人には不適だったはずです。
こんにゃくで思い出すのは、那覇の八重山料理の名店「譚亭」で食べたアダンの実です。ご亭主の説明によると、アダンは毒性があるので、彼らは食べません、とのこと。彼らとは、沖縄本島の人たちのことです。琉球王朝時代、先島諸島の人々は、人頭税などで弾圧され、アダンの実まで食べるしかなかったと言います。アダンは、悲しい過去を伝える食物なわけです。実は、アダンの実に毒性はありません。ただ、強いえぐ味を生み、舌を刺激するシュウ酸塩を含みます。かなり丁寧なあく抜きが必要であり、またかなりの繊維質なので、実際に食べるまでは、数日間に渡る下処理が必要になります。結果、食用には適さないわけです。
こんにゃくには味がないので、料理は味付け次第です。逆に言えば、どんな料理でも使えるとも言えます。おでん、ピリ辛炒め、タラコ和えなど、好きな料理は数々あるのですが、一番のお気に入りは、山形の玉こんにゃくかもしれません。かつて、あの味を再現しようと、色々考え、作ってみましたが、どうもうまくいきませんでした。山形の人に聞いたところ、謎が解けました。するめイカを使うのです。昆布だしに、醤油と酒、そして少量のするめイカを加えだし汁をつくります。ゆでた玉こんにゃくをからめて、少し置いておきます。その後、水を加えて一日ほど寝かせます。後は、食べる前に、水が少なくなるまで加熱して完成です。味をつけるのにも、手間のかかる代物なわけです。(写真出典:gakii.ti-da.net)