マグノリアは、PTAの長編3作目、29歳の時の作品です。前作「ブギー・ナイツ」の大ヒットを受けて、制作会社から好きに撮っていいと言われて制作したとされます。そのせいか、思いが溢れすぎて、やや粗削りな出来になっている面もありますが、その画面からは才能と勢いがほとばしっています。点数をつけるなら、☆☆☆☆ーといったところでしょうが、印象に残る好きな映画です。そもそも群像劇は好むところです。群像劇成功のポイントは、それぞれのエピソードがエッジの効いたスケッチになっていること、そしてエピソードの切替えをスピーディに展開することだと思います。そして、ラストで全てのエピソードが一つにつながりカタルシスが生まれるところが群像劇の醍醐味です。マグノリアでは、そのあたりのツボがしっかりと押さえられています。
PTAの映画は、複雑な家庭環境を題材とする傾向があります。マグノリアも同じなのですが、本作は父親がクローズアップされているように思います。ガンの妻と看病する息子を捨てた父親、クイズ番組の天才少年を搾取する父親、娘に不適切な行為をした父親、そしてその犠牲者である子供たちが描かれます。彼らにからむのは、金目当てで結婚したことを今さら恥じる女、クイズ番組の天才少年としてもてはやされて自分を見失った男、そして愚直がゆえに生きにくい人生を送る警察官です。信心深く愚鈍な警察官はアメリカの良心であり、彼以外は家族崩壊と孤独というアメリカの病を体現しているのでしょう。アルトマンの「ナッシュビル」は崩壊するアメリカの社会を描きました。PTAのマグノリアは、苦悩する現代のアメリカ人にフォーカスしています。
マグノリアにおけるPTAの最も秀逸な着想は、天から降ってくる大量のカエルだと思います。映画冒頭の不思議な3つのエピソードがここで生きてきます。不思議な事は起こるものだ、それが人生だというわけです。PTAは、異常現象作家のチャールズ・フォートの本から着想を得たようです。空から異物が降ってくる現象は、ファフロツキーズと呼ばれますが、古くから世界中で目撃されてきたようです。かつては神の御業とされたのでしょうが、現代では竜巻や強風が原因とも、鳥が餌を落とす現象とも言われます。PTAは、これをドラマを収束させるきっかけとして使います。その着想力には驚かされます。全ての人々が、ある意味、平等に、不思議な現象に見舞われ、それを機に明日への希望のようなものを見出していきます。”life goes on”というわけです。
PTAの映画は、一定のテンションとスピード感が見事に持続されることも特徴の一つです。ダレることがないので、観客は長い映画も苦になりません。才能やセンスの成せる技なのだと思います。それを支えているのが音楽です。マグノリアの音楽は、ジョン・ブリオンが担当しています。加えて、シンガー・ソング・ライターのエイミー・マンの楽曲が効果的に使われています。マグノリアは、PTAが彼女の曲にインスパイアされて生まれたとも聞きます。マグノリアには、主人公たちが、それぞれに彼女の楽曲「Wise Up」を歌うという愛らしいシーンまであります。これも実に秀逸なアイデアだったと思います。エイミー・マンは、文学的に、皮肉っぽくアメリカの現実を歌う人です。最適な音楽を見つけるのも、PTAの優れた才能の一つなのでしょう。(写真出典:amazon.co.jp)






