博多の串焼きと言えば、なんといっても、豚バラです。これも、とりわけ珍しいものではありません。ところが、博多の豚バラ串は、なぜか美味いのです。過日、四ツ谷で、炭火を使った博多焼鳥の店へ行きました。とりかわ串は合格点でした。ただ、豚バラ串は、美味しいのですが、博多のものとは違いました。博多の豚バラ串の特徴の一つは、肉の赤身と脂身のバランスです。ちょうど半々くらいのイメージです。その店のバラ肉のバランスは博多風だったのですが、肉が厚すぎました。博多では、肉が適度に薄く、焼き上がりがカリッとしています。薄めにしていることは、焼き上がりを早くする工夫でもあるのでしょうが、余分な脂を落とし、かつ、うま味を閉じ込める効果があるものと思います。もちろん、火力の強い炭火で焼くことは大前提です。
また、近年は、野菜巻き串が、新たな博多名物になっています。レタス、青ネギ、アスパラ、トマト、えのきといった野菜を、豚バラや牛肉で巻いて串に刺し、焼いたり蒸したりします。ヘルシーでインスタ映えするというので、若い女性からブームに火が着いたと言われます。博多の屋台で、変わり串として出す店もあったようですが、ブームを先導したのは「ねじけもん本店」とされます。もともとは東京の店だったようですが、本場の博多で勝負したいと、15年ほど前に出店し、ブームを巻き起こしました。アスパラ豚などは古典的とも言えますが、レタス豚、青ネギ豚、プチトマト豚などは、もはや定番と言えます。店によっては、様々な新しいアイデア串が提供されています。ただ、野菜巻きのポイントは、厚過ぎず、薄過ぎずという肉の厚さにあると聞きます。
福岡県の焼鳥屋は、総数、人口10万人あたりの数、ともに全国トップです。その背景の一つには、鶏肉にこだわらない串焼の文化があるのだろうと思います。そして、その文化を生んだのは、間違い無く屋台の文化なのでしょう。狭い屋台での調理には限界があります。あらかじめ串打ちしておき、注文が入れば焼くだけという串焼は、実に屋台向きのメニューと言えます。豚バラ串は、絶妙な厚さ、強い炭火、赤身と脂身のバランスなど、まさに屋台ならでは環境が生んだ逸品なのでしょう。また、福岡市は屋台の数も全国一です。現在は100軒程度ですが、ピークだった1960年代には400軒を超していたようです。その競争の激しさが絶品の串焼を生んだとも言えそうです。
博多の友人は、博多の焼鳥消費量が多い最大の理由はキャベツだと言い切っています。博多で串焼の店に入ると、まず、酢ダレがかかった生のキャベツが出てきます。お通しなのかサービスなのか判然としませんが、とにかく、だまっていても出てきます。通常、おかわりし放題です。一串食べて、キャベツをいけば、口もさっぱりして、次の串を美味しくいただけます。また、次の串の出が遅い場合にも、キャベツでもたせられます。確かに、酢ダレがかかった生のキャベツは、串焼きの消費拡大に貢献しているように思えます。このスタイルは、1964年、博多の「天下の焼鳥 信秀本店」の創業者・安岡英雄が始めたとされます。大阪の串揚げ屋のキャベツにヒントを得たようです。もはや、キャベツは名脇役から準主役に出世したようにも思います。(写真出典:tabelog.com)






