チリ・コン・カーンの源流はメキシコ料理ですが、テキサス州で生まれたテックス・メックスとされることも多く、テキサス州は州の公式料理と定めています。それどころか、今やアメリカの国民食の一つと言ってもいいのかもしれません。スペイン語でコン・カルネは”肉入り”を意味するので、肉のチリ煮込みといったところなのでしょう。チリ・コン・カーンは、主に牛ひき肉、そして豆、たまねぎ、トマト、チリ等を煮込んだ料理です。豆の印象が強いものの、ガンボー、フェジョアーダ、もつ煮込み等と同系列の料理だと思います。そのままだけでなく、チーズをかけたり、トルティーヤにはさんだり、ナチョスを添えたりと様々な食べ方があります。ただ、チリ・ドッグは外せません。とても食べにくいのですが、幸せな気分になれます。
人生最高のチリ・コン・カーンは、テキサス州サン・アントニオの運河沿いのチリ・パーラーで食べたものです。頭の中にあったチリ・コン・カーンの理想の味でした。1893年に開催されたシカゴ万博の会場に出店されたサン・アントニオ・チリ・スタンドが大人気となり、チリ・コン・カーンが全米に知られることになったと聞きます。サン・アントニオは、チリ・コン・カーンの聖地の一つでもあるわけです。店で売っていたチリ・パウダーも買って帰ったのですが、結局、家で作ることはありませんでした。チリ・コン・カーン作りは、結構ハードルが高いと思います。NY郊外では材料が手に入りにくいのです。日本では、なおさらです。ネット上には、レシピが多く出ていますが、材料を見た瞬間、これは違うな、と思ってしまいます。
文献上、チリ・コン・カーンの源流とも言える料理は、16世紀のメキシコで唐辛子を入れたシチューとして登場しているようです。17世紀からは、タサホと呼ばれる塩漬けの乾燥牛肉、現代で言えばビーフ・ジャーキーですが、これと唐辛子を煮込む料理が広がっていき、カルネ・コン・チリと呼ばれていたようです。チリ・コン・カーンが、メキシコ料理かテックス・メックスかの議論のポイントが、ここにあるように思います。つまり、メキシコ伝統のチリ・コン・カーンは豆を入れないとう説があります。それが、テキサスで豆が入ったことで現在のチリ・コン・カーンが誕生したというわけです。まぁ、どっちでも良いような議論ではありますが、個人的には、チリ・コン・カーンと言えば、やはり豆が主役だろうと思っています。
カウボーイの話に戻りますが、19世紀後半になると、チャック・ワゴンと呼ばれる料理用の幌馬車が登場します。チャックと呼ばれる料理人がカウボーイたちに食事を提供します。チリ・コン・カーンなどの豆料理に添えられたのが、サワードウ・ビスケットです。乳酸菌発酵を使って簡単に焼けるビスケットですが、長時間熟成すれば酸味の強いサワードウ・ブレッドを焼けます。これがチリ・コン・カーンにはよく合うように思います。辛味と酸味がマッチするのかもしれません。サワードウ・ブレッドは、サンフランシスコ名物ですが、ゴールド・ラッシュのおり、金鉱堀りがよく食べていたことが起源と聞きます。日本のパン屋でサワードウ・ブレッドを見かけることはありません。ただ、ライ麦の含有量が多い黒パンは、同じ乳酸発酵です。チリ・コーン・カーンのお供として、ライ・ブレッドも有りというわけです。(写真出典:en.wikipedia.org)





