文豪ストレイドッグスでは、太宰治の趣味は自殺とされているようです。笑えます。太宰治は、1948年6月13日、玉川上水で山崎富栄と入水自殺しています。いわゆる心中です。2人の遺体が発見されたのが6月19日、太宰39歳の誕生日でした。短期間ですが、私は、三鷹、小金井に住んでいたことがあり、玉川上水あたりも散歩していました。大河というわけでもなく、とても入水自殺できるようなところには思えませんでした。2人の遺体は赤い紐で結ばれていたようですが、太宰は入水前に事切れていたのではないかという説もあります。というのも、山崎富栄は悶絶したような死に顔で、太宰は穏やかな表情をしていたというのです。いずれにしても、以降、6月19日は、太宰を偲ぶ“桜桃忌”とされ、毎年、三鷹の墓前には熱烈なファンが集っているようです。
桜桃忌に際し、太宰の墓石の刻銘に桜桃(サクランボ)を詰めるという風習は、昔から続いており、今も行われているようです。ところが、近年、墓前に飲みかけのビールやウィスキー、タバコの吸いさし等が、大量に残されているのだそうです。それらの片付けには手間暇がかかるものですから、津島家と三鷹市は、注意喚起の立看板や、場合によっては監視カメラの設置も検討しているようです。恐らく、近所の悪ガキの仕業ではなく、文豪ストレイドッグスを通じて太宰のファンになった若者たちがお供えしたものなのでしょう。故人が好んだものを墓前にお供えすることは、決して珍しいことではありません。ただ、墓前へのお供えは、持ち帰ることが常識です。そうした常識が文豪ストレイドッグスのファンには伝わっていないということなのでしょう。
確かに迷惑な話なのでしょうが、ファンの共感を示したいという気持ちも分かります。太宰と言えば、かつては高校生が一度は通過する麻疹のようなものと言われていました。アメリカで言えばサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」も同じですが、読者は主人公に自分の姿を見るわけです。ただ、本を読む人が減っている現状からして、太宰を読む若者も少なくなっているはずです。太宰に限らず、経緯はどうあれ、若い人が文学に触れる機会が増えるのはいいことだと思います。思えば、近年の刀剣、囲碁、百人一首等のブームも漫画がきっかけでした。古くは、サッカーやバスケットボールも漫画が競技人口を増やしました。ただ、本当の太宰ではなく、あくまでも漫画のキャラクターのファンだという点は気になりますが、きっかけと考えればいいのでしょうが。
太宰治は、1909年、青森県の旧金木町の大地主・津島家に生まれています。旧制青森中学、旧制弘前高校を経て、旧東京帝大仏文科に入学するも中退しています。在学中から執筆活動を始め、作品は評価されますが、私生活は、麻薬中毒、多数の女性遍歴などと乱れます。太宰の作品は私小説と呼ばれます。当時の文壇の流行でもありましたが、自虐的に人間の弱さを描く太宰の作風にはピッタリだったのでしょう。太宰の特長として言及すべきは、文章の上手さだと思います。テンポの良さもあいまって、とても読みやすい文章になっています。それは、本を読まなくなった若者にとっては好都合なのだと思いますし、恐らく翻訳もしやすいのではないかと思います。太宰ブームなるものは、太宰の文章力によるところも大きいと思うわけです。(写真:銀座ルパンにて 出典:ja.wikipedia.org)






