ポリネシアとは、太平洋中央から南部という広い海域に点在する島々の総称です。ハワイ、ニュージーランド、タヒチ、サモア、トンガ、ツバル、イースター島等が含まれます。ポリネシアという呼称は、19世紀、ギリシャ語のポリ(多くの)とネソス(島)からフランス人が命名しています。DNA解析によれば、ポリネシア人は、4,500年前に台湾・中国南部からパプアニューギニア等のメラネシアに到着し、3,000年前にはトンガやサモアなどの西ポリネシアに定住したようです。そして3~10世紀にかけて、イースター島、ハワイ、ニュージーランド等に移住していったようです。ゲノム解析が可能になる以前、ポリネシア人の起源に関しては諸説ありました。最も有名なのは、ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールの南米起源説だったのでしょう。
ペルーとポリネシアの石像や植物名に類似があることから、ヘイエルダールは南米起源説を唱えます。太平洋を古代の舟で航海することは不可能だと哄笑された彼は、筏船コンティキ号でペルーからポリネシアへ航海します。「コンティキ号漂流記」は、世界的ベスト・セラーとなり、日本でも小学生の必読本でした。南米起源説は、DNA解析によって否定されましたが、インカの遺跡にも交流の記録が残り、南米原産のサツマイモは古くからポリネシアでも栽培されており、呼称もほぼ同じです。近年、ゲノム解析によって、ポリネネシア人とコロンビアの先住民との混血が12世紀に起こっていたことも確認されました。チリとイースター島の間は約4000kmあります。それを超えて航海をしていたわけです。最大の難所はチリ沖のフンボルト海流とされます。
コンティキ号も、ペルー海軍に曳航されてフンボルト海流を越えざるを得ませんでした。ポリネシア人が航海に使った舟は、彼らが発明したとされる双胴のカタラマン、あるいはアウトリガー付のカヌーだったとされます。また、三角形のクラブクロー・セイルもポリネシア人の発明とされます。特に、スピードが速く、物資を多く積載できるカタラマンは、長期の航海が可能でした。カタラマンの存在は、南米との交流以前に、広大な海域に点在する島々を結び、ポリネシア文化を成立させたとも言えます。さらに、ポリネシア人は航海術にも優れていたとされます。潮の流れや波のうねり、星や太陽の動き、風や雲の状態、あるいは海鳥の生態等もよく知っていたようです。フンボルト海流の季節による変化や赤道付近で西へ流れることも知っていたのでしょう。
カタラマンはタミル語の束ねた木を語源とする英語です。双胴のカヌーは、ハワイでは”ワア・カウルア”、タヒチでは”ヴァア・タイエ ”と呼ばれます。一度、ワイキキで観光用のカタラマン・ヨットに乗ったことがあります。20人乗り程度のシンプルなカタラマンでした。速くて安定性が高いはずでした。確かに速いのですが、沖では荒々しくバウンドし、船酔いする乗客が多くいました。カタラマンは水の抵抗を受けやすくなるのですが、近年は、材質や構造の進化もあり、安定性高く、かつ速くなっているようです。2019年に始まった「SailGP」は人気の最速ヨット・レースです。細く高いセイルと水中で揚力を生むフォイリング機能を持つカタラマン「F50」を使うワン・デザイン・レースです。F50とは、フォイリング機能を持つ50フィートのヨットという意味だそうです。アメリカズ・カップのヨットがベースになっています。速くて、機敏なセイリングは、まさに海のF1といった印象です。(写真出典:aloha-program.com)






