小説は2006年から9作、ドラマは2013年から10シーズンがリリースされています。刑事小説の魅力の半分は舞台設定にあります。極北の島、風が強く曇りがちな島、樹木がほとんどない島、しかも島の人間は皆知り合いというシェトランドは、刑事小説にとって魅力あふれる舞台です。また、刑事物ではお決まりの刑事本人の複雑な家庭もしっかり組み込まれています。ドラマとしては、英国伝統のフーダニット系謎解きミステリーに、ノルディック・ノワールのテイストも加えられていることが特徴なのでしょう。シーズン1~2は、アン・クリーヴスの原作に基づく1ストーリー2話構成でしたが、シーズン3以降は、オリジナル脚本で1シーズン1ストーリー6話構成になります。このじっくりとドラマを展開させるスタイルがシェトランドの独特な世界を形作っています。
シーズン7までは、ダグラス・ヘンシャルがジミー・ペレスを演じていました。その寡黙で内省的な個性がシェトランドというドラマを性格づけていました。ところが、シーズン8からは、主要な脇役はそのままに、ヘンシャルは降板し、代わってアシュリー・ジェンセンが主役になります。なんとも大胆な交替です。高い人気があるからこそ、できた主役交代であり、以降もシリーズは継続され、シーズン11まで予定されています。ヘンシャルの最後の出演となったシーズン7は、明らかにシリーズの終わりとして制作されているように思います。シーズン6で最高視聴率をヒットし、以降、多少低下したとは言え、高い数字を稼いでいたシリーズを、継続するか否か、継続するとすればいかに、といった議論が製作陣のなかでなされたのでしょう。
シーズン8から変わったことは、主演だけではありません。ジェンセン演じるルース・コールダー警部補は、ロンドン警視庁から派遣されますが、もともと島の出身であり、なにやら複雑な過去も背負っています。シェトランドの魅力の一つであるテーマ曲も、フォークロア感を抑えた曲調になっています。シェトランドは、荒涼とした風景を美しく映像化している点も魅力の一つです。シーズン7までの映像は曇天で暗めで寂寥感を漂わせていましたが、シーズン8からは、日差しが多くやや明るい色調に変わっています。登場人物たちは、相変わらず一癖も二癖もありそうな人々ですが、ローカル感が薄れ、いかにも役者がエッジを効かせたキャラクターを演じているという印象です。つまり、ドラマの本質を構成していたシェトランド諸島のリアルな暗さが薄れ、ドラマは一層プロット重視に変わり、島は単なる舞台へと変化したように思います。
同じアン・クリーヴス原作の人気刑事ドラマに「ヴェラ」があります。2011年から14年間、14シーズンが放送されました。スコットランド北部を舞台に、肥えて偏屈で優秀なおばさん刑事ヴェラが活躍するシリーズです。ヴェラもシェトランドも、ミステリー・チャンネルの看板ドラマです。ミステリー・チャンネルは、一挙放送スタイルを採っています。つまり、シェトランドの1シーズン約6時間が連続して放送されるわけです。録画して観ることを前提としたスタイルなのでしょう。私は録画機を持っていません。必要を感じないからです。見逃した番組に関しては、NHK ONEやNHKオンデマンドがあれば十分です。そういう人に一挙放送スタイルは不都合極まりないものです。結局、Amazonで有料で視聴することになります。シェトランドは、お金を払ってでも観る価値がありました。ただし、シーズン7までですけど。(写真出典:filmarks.com)






