一方、輸入量や消費量を見て驚くのは、日本の順位です。輸入量では、EU、米国、日本と続きます。消費量の順位を見てみると、EU、米国、ブラジル、日本となっています。人口は、EU4億5千万人、米国3億2千万人、ブラジル2億1千万人に対し、日本は、1億2千万人と大きな違いがあります。そこで、一人当たり消費量を見てみると、ノルウェー、スイス、EU、米国、日本という順番になります。ノルウェーやスイスは、日照時間の少なさから、伝統的に浮腫予防のためにコーヒーを飲んできたのでしょう。いずれにしても、日本の輸入量・消費量の多さが目立ちます。いつの頃からか、日本は、コーヒー大国になっていたわけです。
とは言え、日本国内でのコーヒー消費は、緑茶には敵わないだろうと思っていました。大間違いでした。緑茶・紅茶・コーヒー消費の構成比を見ると、1964年前後3か年平均では、緑茶が63%、コーヒーが29%でした。それが、2020年前後3か年平均では、緑茶33%、コーヒー60%と、大きく変わっていました。日本は、緑茶を飲むのを止めて、コーヒーの国へと変わっていたわけです。この50~60年間に、日本では何が起こったのでしょうか。簡単に言えば、いわゆる”食の洋風化”が進んだということになります。とりわけ、朝食がパン食主体に変わったことが大きく影響しているものと考えます。
農林水産省の説明によると、”食の洋風化”は、戦後、アメリカの援助で始まったパンとミルクの給食が大きく影響し、その後、輸入自由化や海外渡航の増加によって、洋風化が進んだということになります。パン給食に関しては、日本の小麦輸入量を増やすためにアメリカが行った戦略だったという陰謀説もあります。味覚は10歳までに決まるとも言われますので、嗜好に関する給食の影響は否定できないと思います。一方、朝食が、より簡便なパン食になったのは、専業主婦が減り、共稼ぎ世帯が増加したことが背景にあるのでしょう。戦後、女性が強くなったからだという言い方もされます。パン食に合うのはコーヒーということで、消費が増加してきたのでしょう。
緑茶・紅茶・コーヒー消費の構成比を地域別に見てみると、現在も緑茶が50%を超えているのは、静岡市と鹿児島市という2大茶葉生産地だけです。ちなみに、他の街を見ると、50年前、山形市と甲府市は、緑茶の占率が8割を超えていました。ところが、両市とも、現在は、3割にまで減っています。緑茶の減少は、全国的傾向と言いながらも、両市の激減ぶりは目を引きます。山形と甲府では、一体、何が起こったのでしょうか。ネットで調べる限りは、さっぱり分かりませんでした。興味深いところです。(写真出典:ejcra.org)