2026年10月19日月曜日

越後七不思議

新潟県には親鸞に関わる”越後七不思議”という伝承があります。例えば、本所七不思議などとは異なり、越後七不思議は、植物や魚といった自然界の希少種だけで構成され、見ようと思えば見れるものばかりです。親鸞聖人が、越後配流となったのは1207年のことです。律令時代には越後国の国府が置かれていた直江津、現在の上越市の居多ヶ浜に上陸してから、7年間を過ごしたとされます。配流から5年後に勅許の宣旨が出ていますが、親鸞は、しばらく越後に留まったわけです。越後は、佐渡島を中心に流刑地として知られ、順徳上皇、日蓮、世阿弥なども配流となっています。越後へ流された者のなかで、最も強い影響を残したのは親鸞だと思われます。ちなみに、新潟県の寺院の4割以上が浄土真宗となっています。

全国の仏教寺院数は、約76,000。宗派別に見れば、最も多いのが曹洞宗の14,600寺で約20%を占めます。次いで浄土真宗本願寺派が10,500寺で14%、真宗大谷派が8,800寺で12%と続きます。ただ、浄土真宗全体として見れば、21,000寺で28%となり最大勢力と言えます。北陸三県では7~8割が浄土真宗となっています。一向一揆の歴史を持つ国々ですから、当然と言えば当然です。北陸に一向宗(浄土真宗)が多い理由は、紛れもなく、本願寺中興の祖とされる蓮如の功績ということになります。比叡山延暦寺の迫害を受けた蓮如は、越前吉崎に吉崎御坊を建立し、北陸一円、遠くは奥州まで門徒を広げています。それが一向一揆へとつながり、百年に渡る“百姓の持ちたる国”を実現していくことになります。新潟県に浄土真宗が多いのは、親鸞の影響ばかりではないのでしょう。

さて、越後七不思議ですが、以下の通りとなります。

逆さ竹 枝が下向きに生える枝垂れタケ。親鸞が竹杖を逆さに土に挿したものに根が生えたとされます。天然記念物にも指定されています。

焼鮒 親鸞が焼いた鮒を池に戻すと生き返ったとされ、以降、焦げ目のような模様を持つ鮒が捕れるようになります。

八房の梅 ひとつの花に八つの実がなる梅ですが、親鸞が梅干しの種から育てたとされます。ただ、八房の梅は他にもあるようです。

珠数掛桜 親鸞が桜の枝に数珠を掛けると、花が数珠つながりに咲くようになったとされます。天然記念物に指定されています。

三度栗 一年に三度花が咲き、三度実がなる栗です。親鸞が焼栗を植えて育てたとされます。

繋ぎ榧 糸を通したような穴のある実がなるカヤの木ですが、やはり天然記念物に指定されています。農民が年貢代わりに納めた糸でつないだ榧の実を、親鸞が植えたとされます。

片葉の芦 葉が片側にだけ伸びる芦。親鸞が祈ったところ、片葉になったとされます。実は、本所七不思議の一つにも”片葉の芦”があります。

確かに珍しい品種ばかりなのでしょうが、親鸞との関わりは後付けとしか思えません。逆に言えば、それほど当地で親鸞が尊敬を集めていた証左ということになります。法然が開いた浄土宗は、南無阿弥陀仏と唱えれば、阿弥陀仏に救われ、極楽浄土へ往生できると説きます。末法とされた世にあって、鎮護国家の宗教だった仏教を個人救済の宗教に変えたとされます。法然の高弟であった親鸞は、法然の他力本願をさらに進め、絶対他力、つまり、修行ではなく阿弥陀仏の力によって信心が生まれ、往生できるとします。いわゆる念仏為本から信心為本へ、出家中心から在家中心への展開です。まさに宗教革命であり、浄土真宗が人々に熱狂的に受入れられたのも頷けます。仏教ではありますが、一神教に近いと言うこともできます。越後七不思議は、親鸞というよりも、阿弥陀仏の御業ということなのかもしれません。(写真出典:hongwanji.kyoto)

越後七不思議