実に立派な建物であり、意匠も見事なものです。国宝にも指定されています。ところが、どうもしっくりこないところがあります。明確に、何が問題かは答えられないのですが、映画のセットのような違和感、あるいは借物感を感じます。日本の古い洋館がすべてそうだというわけではありません。例えば、赤坂離宮の前に迎賓館として使われていた旧朝香宮邸、現在の東京都庭園美術館などは、是非とも住みたいと思うほど好きな建物です。明治天皇がお気に召さなかった理由は分かりませんが、やはりしっくりこなかったのではないかと想像します。それが理由とは思いませんが、2005年、純和風の京都迎賓館が開館しています。公式には、日本の歴史や文化を象徴する京都で賓客をもてなし、日本への理解と友好を深めるために建設されたということになります。
1990年代初頭、平安建都1200年を記念し、地元から国へ和風迎賓館を求める動きが起こり、1994年に建設が閣議決定しています。京都御苑内の北東部、御所の東に、地上一階、地下一階の純和風平屋建築として建てられました。2016年から、限定的ながら一般公開も行われています。希望者は、事前に宮内庁へ申し込む必要がありますが、空きがあれば当日参観も可能です。一般参観は、一日当たり360名に限定され、基本的には90分のガイドツアー方式で行われます。見てみたいと思っていましたが、今般、初めて参観してきました。日本の建築、造園、工芸における伝統技法の粋が集められ、現代技術によって支えられている最高級の施設だと感得しました。京都御苑内にあり、築地塀を巡らせた施設は、まさに日本の迎賓館に相応しい建築だと思いました。
最も印象に残ったのは、桐の間、水明の間、そして庭園でした。桐の間は、56畳の掘炬燵形式の和室宴会場です。随所にレベルの高い意匠が施されていますが、とりわけ座卓は長さ約12メートルの等厚合板に漆黒の蝋色漆塗りの逸品です。ちなみに、料理は、京都の複数の老舗料亭が請け負い、京料理を出すようです。次の間もしつらえてあり、芸子舞子の踊りや邦楽の演奏が披露されることもあるようです。正直なところ、これほどの座敷は存在するわけもなく、間違い無く日本一の高級料亭だと思いました。水明の間は、首脳会談などが行われる最も格式の高い部屋であり、平生は非公開です。ラッキーなことに、たまたま、メンテナンス中だった夕映の間の代替として参観させていただきました。池に張り出して作られ、庭の緑や水面の光を取り込む特別な部屋です。
水をテーマとする水明の間では、意匠も水に関連したものが多く配されています。天井は舟天井であり、小振りなシーリング・ライトが多く配されています。ただ、和紙と組子をイメージした天井のモダンな細工が光を和らげています。椅子は、波立涌文様の西陣織が置かれています。そして、青海波の段通は所々切り込みが入れられ、立体感を出しています。これほどのものは山形のオリエンタル・カーペットにしか出来ないだろうと思いましたが、調べて見ると、案の定でした。庭は、京都の老舗”植藤”の第16代 佐野藤右衛門の作庭です。伝統的な日本庭園の様式をしっかり踏襲しつつ、かつて何かに使われていた石材を用いるなど随所にモダンなアイデアが活かされた庭になっています。池を取り囲むように作られた京都迎賓館は、水の迎賓館でもあります。(写真出典:ja.kyoto.travel)
