くじらもちは、もち米とうるち米の粉を水で練り、クルミや小豆を混ぜて、蒸籠蒸しにしたものです。もっちりとした食感が特徴です。鯨は一切入っていません。山形県にも、くじらもちがあります。新庄が発祥とも言われます。山形では、久しく持ちの良い食べ物という意味で久持良餅と呼ぶのだそうです。また、鯨の肉に似ているから鯨餅という説もあるようです。起源ははっきりしませんが、江戸期に京菓子が北前船で庄内や青森に伝わったものとされます。山形では、新庄藩の3代藩主の頃に兵糧として考案されたという説があります。また、大洲の志ぐれについては、18世紀始から、大洲藩の江戸屋敷内で秘法菓子として伝えられてきたものとされています。個人的には、”ういろう”が田舎に伝わり、もち米やうるち米を使って再現されたのではないかと思っています。
ういろう(外郎)は、デンプンと砂糖を練って蒸したものです。 ぷるんとした食感となめらかな舌触りが特徴です。ういろうは、室町期から存在していたようです。中国からの伝来という説が有力で、元朝の医官(外郎)だった陳宗敬が、元の滅亡とともに博多に亡命し、薬としての外郎薬、そして菓子としての外郎を伝えたとされます。陳宗敬の子が、室町幕府に招聘されて京に移り、医術や貿易に励むかたわら、ういろうの製造販売を代々行っていくことになります。ういろうは、江戸期にかけて各地へと広がっていきます。ういろうと言えば名古屋名物として有名です。米粉を使う名古屋のういろうは、食感が少しくじらもちに近いとも言えます。ういろうは、名古屋以外にも、京都はじめ、山口、小田原、伊勢、神戸、徳島、宮崎などの伝統菓子になっています。
ういろうに近いものに蒸し羊羹があります。蒸し羊羹は、こしあんに、小麦粉や片栗粉、砂糖や水などを混ぜて蒸し固めたものです。寒天を入れて冷やし固める練り羊羹よりも歴史は古いようです。いずれにしても、棹状の蒸し菓子のなかで、もち米とうるち米を使うものは、くじらもちと志ぐれだけのようです。なぜ青森、山形、愛媛にだけ存在するのかはよく分かりません。共通点も見いだせません。あるいは、かつては各地にも存在し、その三ヶ所にだけ残ったのかもしれません。少し気になることもあります。芋煮と言えば、山形を中心に東北各地で行われる伝統行事です、実は、大洲にも、同じ様な”いもたき”の伝統があります。とすれば、山形と大洲に何か関係があったのか、とも思いますが、どうも一切関係はないようです。ちなみに、南予名物のじゃこ天は、宇和島藩主として仙台から赴任した伊達秀宗が伝えたとも言われます。
タイの伝統菓子カノム・チャンは大好物です。餅粉とタピオカを煉って蒸し、それを幾層も重ねたお菓子です。ういろうに近いと思います。実は、カノム・チャンに類した伝統菓子は、東南アジア一円に存在します。マレーシア・インドネシアのクエ・ラピス、ヴェトナムのバイン・ダ・ロン、他にフィリピンやミャンマーにもあるようです。これらの来歴は、極めて明確です。15世紀頃に、福建省あたりから移民してきた客家が伝えた九層糕がローカル化したものです。そもそも蒸し料理は、6~7千年前の中国で始まったようです。要は、蒸し器の発明に始まるわけです。それが、日本や東南アジア一帯に広がっていきました。面白いことに欧州には蒸し料理の歴史がありません。米の粒食、小麦の粉食の文化が深く関わっているように思えるのですが、よく分かりません。(写真出典:serai.jp)
