”地頭が良い”という言葉もよく耳にします。知識は乏しくても優れた知恵を持っている人という意味だと思います。記憶力と応用力の違いとも言えます。会社のあるあるですが、偏差値の高い大学を卒業した人が、必ずしも仕事で結果を残すとは限りません。入学試験等では記憶力を試す問題が多いわけですが、会社に入ると問題解決力や応用力が求められる場面が多くなるからです。似たような概念に”IQ(Intelligence Quotient)”があります。しかし、IQが示すのは、思考能力のうち、判定可能なごく一部に過ぎず、地頭の汎用性の高い知恵とは異なります。IQは、テストによって数値化することができますが、それは同年代と比べた発達度を示すものであって、思考力や処理能力の絶対値を表すものではありません。IQは、いわば思考の成熟度を表していると言えるのでしょう。
IQは”知能指数”と訳されます。この訳語が、大きな誤解を生んでいるようにも思います。つまり、世間では、IQが高い=知能が高い=頭が良い、という受け止めが一般化しているように思います。そもそも”頭が良い”という言葉が意味不明であることも、誤った認識を広げることにつながっているのでしょう。IQが高い=頭が良い、という関係を全面的に否定するものではありませんが、IQの数値は、あくまでも頭脳の能力の一側面を相対化したものに過ぎません。一般的に、IQは、認知機能、問題解決能力、論理的思考力等を表すとされます。まとめて”知能”とも言えそうですが、それではあまりにも広すぎ、総合的に過ぎると思います。IQは、より限定的な概念であることを伝えるために”思考の成熟度指数”とでも呼んだ方がいいのではないかと思います。
IQが高ければ、勉強や仕事の成果も大きくなるのかと言えば、そうでもありません。私は、よくIQを車のエンジンの回転数に例えます。エンジンの最高出力、いわゆる馬力は、回転数×トルクで決まります。トルクは、回転させる力を表します。回転数が高くてもトルクが低ければ馬力は高くなりません。逆も真なりですが、その代表例だと思うのがアメリカ大統領を務めたブッシュ親子です。公表されているブッシュ親子のIQは100程度です。IQは標準偏差で表されますから、100は平均的ということになります。アメリカ大統領は、厳しい選挙戦を戦い抜き、国民から選ばれたスーパーマンです。中途半端な能力で成し得ることではありません。ブッシュ親子は、トルクが極めて高かったわけです。ちなみに、馬鹿のふりをしているトランプの推定IQは150を超えています。
1950年代、アメリカで犯罪とIQの関係を調査したところ、犯罪者の平均IQが、一般人を下回っていたのだそうです。そこで犯罪とIQの関係が研究されました。しかし、研究は政府の指示によって禁止されます。実に賢明な判断です。犯罪者の平均IQが低いからといって、IQの低い人が全て犯罪を犯すとは限りません。時を同じくして、アメリカではロボトミー手術が行われていました。神経疾患の治療として脳の前頭葉から他へ伸びる神経線維を切断する手術です。これが重犯者等に対しても行われるようになります。後に、ロボトミーは、人権無視であるとして世界中で禁止されました。犯罪とIQの研究も、放っておけば人権無視につながりかねない話だったわけです。そもそも脳の働きは実に多様であり、総合的な良し悪しなど判断できません。ましてや能力を数値化することなどできませんし、数値化したところで意味はありません。(写真出典:president.jp)