2026年5月26日火曜日

「マンダロリアン・アンド・グローグー」

監督:ジョン・ファヴロー          2026年アメリカ

☆☆☆

なぜ、この映画を観に行ったのかと聞かれると、なかなか答えにくいところがあります。恐らく、50年来のスター・ウォーズ・ファンだからということになるのでしょう。また、ストリーミングで観ていた「マンダロリアン」が、結構、お気に入りだったからでもあるのでしょう。いずれにしても、スター・ウォーズのスピンアウトながら、さしたる期待も持たずに観た映画です。その最大の理由は、グローグーをクローズアップしたファミリー映画だろうと想像できたからです。やはり、ほぼファミリー映画でした。近年のゲーム感覚のアクション映画らしく、スピード感があり、バトル・シーンも連続するのですが、比較的マイルドに仕上げられていました。つまり、凡庸だったということです。

マンダロリアンは、2019~2023年にDisney+でシーズン3まで配信されました。また、2021年には、そのスピンアウトである「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」も配信されています。シリーズは、マンダロリアンの抱える孤独感を下敷きとした独特な世界観が印象的でした。グローグーは、連帯への渇望や家族への回帰の象徴でした。マンダロリアンは、アメリカの現状を反映した作品です。本作は、マンダロリアンの孤独は語られず、シリーズの外見だけを利用しています。配信時には、グローグーがベイビー・ヨーダとして人気が出たので、映画化に際しては、当然グローグーがクローズアップされるだろうとは思っていました。しかし、マンダロリアンの孤独を前提としなければ、マンダロリアンはただの強いおじさんであり、グローグーの魅力も失われます。

マーケティング上も、ターゲティングが実に中途半端であり、タイトルにもそれが現れています。これでは、スター・ウォーズ人気を利用しつつ、大ヒットした「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の柳の下を狙った作品としか思えません。グローグー推しならば、いっそのこと、「グローグーと仲間たち」てなタイトルで子供向けのアニメにでもしたほうが良かったのではないかと思います。シーズン4相当というセッティングも、マンダロリアンの世界観が伝わらない理由の一つです。むしろ、シーズン1~3を再構築して映画化すべきだったように思います。もちろん、それではファミリー映画に仕立てることが難しくなるのでしょうが。いずれにしても、中途半端な映画になっていますが、さすがディズニー、一定以上のレベルには達していると思います。

スター・ウォーズは、SFアクション映画ですが、哲学的とも言えるテーマをしっかり持っているからこそ永く愛されてきたのだと思います。それはスピンオフであっても同じです。配信シリーズで一番の変わり種は、少年少女の冒険譚である「スケルトン・クルー」ということになります。少年少女冒険譚は、ハリウッドの伝統芸とも言えます。豊富な経験に基づく安定感あふれるプロットとスター・ウォーズの世界観が見事にマッチした作品でした。スケルトン・クルーも、しっかりとしたテーマを持っていました。それは、ありふれているとは言え、少年少女の成長です。本作は、分かりやすいテーマに欠けます。マンダロリアンの孤独、父子の絆といった要素はあるのですが、それらは、全くフォーカスされていませんでした。

スター・ウォーズ・シリーズのなかで、マンダロリアンは拡張性のある系統だと思っていました。既にボバ・フェットをスピンオフしているわけですが、他にもディン・ジャリンとグローグーの冒険、グローグーの成長、あるいはマンダロリアン族の起源など、様々な展開が考えられます。ジャバ・ザ・ハットの息子ロッタ・ザ・ハットにも可能性があります。しかし、本作がコケると、残念ながら、すべての可能性が潰えてしまう恐れもあります。なんとか、配信シリーズだけは残してほしいものだと思います。(写真出典:en.wikipedia.org)