私の朝食は、7割が和食、3割がパン食です。食べるパンは、イングリッシュ・マフィン、パン・ド・ミー、クロワッサン、夏場に限ってサルサ・ドッグ用のロール・パンといったところです。食パンは食べませんが代わりにパン・ド・ミーというわけです。日本の食パンは、ミルク、バターといった乳脂肪、あるいはショートニングなどの油脂を添加し、ふんわりと焼き上げます。また湯種製法などによって、もっちりとした食感に仕上げるものもあります。いずれにしても、日本の食パンは、パンそのものを味わえるよう工夫されています。一時期ブーム化した高級食パンは、その頂点だと言えます。銀座のセントラル・ベーカリーの食パンの美味しさには驚きましたが、その後、大阪の会社等が、マスコミを使ってブーム化させたことが仇となって下火になりました。
日本の食パンの進化の背景には、白米を主食とし、その味にこだわってきた食文化があるように思います。ただ、添加物の多さは、小麦本来の味が失われる傾向にもつながります。対して、パン・ド・ミーは、油脂や砂糖をあまり使わないために小麦の香りが引き立ち、食感はサクサクッとしています。ミーとは中身を意味します。日本人が米そのものを味わうのと同じく、フランス人もパンそのものを楽しむ人たちです。パリパリのクラスト(皮)を楽しむバゲットに対して、クラム(中身)を楽しむために考案されたのがパン・ド・ミーです。17世紀、フランスの貴族が好んだクラストの少ないパンが起源とされます。その後、19世紀初頭の英国でブリキ型に入れて焼く方式が考案され、アメリカの食パンやフランスのパン・ド・ミーにつながったようです。
しかし、フランス人が好むパンは、なんといってもバゲットです。フランス人一人当たり、一日に0.5本のバゲットを消費し、9割のフランス人が毎日バゲットを買っているのだそうです。日本人にとっての米以上の存在です。そんな国でパン・ド・ミーが焼かれるようになった理由は、第二次大戦後、進駐したアメリカ兵のニーズを満たすためだったと聞きます。ちなみに、日本における食パンの普及も進駐軍に始まっています。あの不味いアメリカの食パンを欲しがった米兵たちが、あの美味しいパン・ド・ミーを生んだという、なんとも皮肉な話です。不思議なのは、パン・ド・ミーの味を覚えたアメリカ兵が帰還しても、アメリカでパン・ド・ミーが普及しなかったことです。やはり、何でもパンに挟んで食べるアメリカの食文化にあっては、あの味気ないパサついたパンがしっくりくるということなのでしょう。
アメリカで食パンの普及に貢献したのは、1920年代後半に発明された自動スライサーとポップアップ式のトースターだったと聞きます。今でも、ポップアップ・トースターは、アメリカ文化のアイコンの一つです。自動スライサーの導入によって、食パンの厚さが規格化されたことで、ポップアップ・トースターも普及したわけです。ところで、私が最も好むパン・ド・ミーは、フォションのものです。次いでプチメックといったところです。いずれでもスライスされたものを買います。自分では、どうも上手く切れません。フォションでは4枚切り、プチメックでは6枚切りを買います。それぞれのサクサク感を楽しむのに最も適した厚さだと思っています。ちなみに、フォションのパン・ド・ミーは日本限定商品とのこと。納得できる話です。(写真出典:tabelog.com)
