2026年10月5日月曜日

あけび

家の近くを散歩していると、庭にアケビの木を育てている家を見つけました。アケビの木など見分けもつかないのですが、実が成っていたので間違いありません。アケビは山の中に自生しているものだと思っていたので驚きました。調べてみると、観賞用として、そこそこポピュラーなものらしいのです。久々にアケビの実を見たら、食べたくなりました。とは言え、スーパー・マーケットで、簡単に手に入るものでもりません。最後にアケビを食べたのは、10年ほど前、熊本でのことでした。酔っ払って、下通のアーケード街を歩いていると、小さな八百屋の店先にアケビを見つけました。迷わずに購入し、ホテルで食べました。やさしい甘さに、少し幸せな気分になりました。

熊本の前にアケビを食べたのは、さらに7~8年前、山形でのことでした。気に入った日本酒の店があり、山形に行った際にはお邪魔していました。そこでアケビの肉詰めが出されたのです。アケビの実の皮の部分を食べるという発想がなかったので、大いに驚きました。聞けば、山形では定番の家庭料理だというのです。アケビの肉詰めは、皮の苦味に味噌ベースの味付けがいい塩梅に乗って、なかなか乙なものでした。喜んで食べているうちに、アケビの実の甘い果肉はどうしたのか、ということが気になり、聞いてみました。なんと、捨てるというのです。目が点になりました。三枚におろした鯛の皮だけを調理し、身を捨てるようなものです。そこで、お願いして果肉を出してもらい、美味しくいただきました。仲間にも勧めたのですが、食べたのは私だけでした。

アケビの実の皮を食べるのは、山形だけではないようですが、農水省の「うちの郷土料理」では、”あけびの味噌詰め焼き/あけびの油焼き”が山形県の郷土料理として登録されています。山形では、春の新芽は山菜として、秋は実を肉詰め等にして食べ、さらにつるはつる細工に使うようです。ここまでアケビを使い切る県は、他にはないものと思います。アケビの栽培も行われており、生産量は日本一とのことです。山形県は、食の宝庫と言われます。名産品として、米、牛肉、豚肉、果物、野菜などがよく知られています。また、料理も、そば、芋煮、玉こんにゃく、ラーメン、棒鱈、漬物などが有名です。実に多彩な食材と料理ですが、その多くがブランド化されている点も見事です。ただ、その山形県が、アケビの甘い果肉を食べないというのも驚きです。

アケビは日本原産です。熟すると実が割れることから、”開ける+実”でアケビと呼ばれるようになったとされます。学名は「アケビア・キナタ」です。”キナタ”とは、ラテン語で”5個ずつ”を意味し、アケビの花の5枚の小葉を指すようです。北海道以外の日本、朝鮮半島、中国に分布しているようです。中国名は“木通”です。欧米では、”キナタ”、あるいはチョコレートの匂いがすることから”チョコレート・ヴァイン”とも呼ばれ、19世紀、観賞用に輸入されたようです。ただ、寒さや乾燥にも強く、天敵のいないアメリカでは生態系を脅かす侵略的外来種とされている地域が多いようです。また、アケビは、古くから生薬として用いられてきました。利尿効果や内臓の熱を下げる効用があるようです。逆に、妊婦や胃腸が冷えやすい人には禁物とされています。

実は、アケビには、もう一つ、注目すべき利点があります。種子から採れるアケビ油です。江戸期から昭和の初め頃までは、食用油の王様として珍重されていたと聞きます。主に秋田藩で搾油されており、手間がかかることから生産量は少なく、希少価値も高かったようです。アケビ油は、他の植物油とは異なる成分構造を持ち、消化、吸収されにくく、かつ体脂肪がつきにくいとされます。結果として、美肌効果、高血圧予防、血糖値上昇の抑制などの効果が期待されているとのことです。ただ、生産者も少なく、ごく少量が高額で販売されています。大雑把に言えば、ごま油の10倍以上の値段です。生産量を増やす取組も始まっているようですが、庶民でも購入できる日は、相当、先になるのでしょう。(写真出典:oishii.iijan.or.jp)

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