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| カブラレス |
ただ、青カビが発生するということは、他の毒性の強いカビ類も発生している可能性が極めて高く、カビの発生した食品を食べることは危険だということになります。しかも、食品の表面のカビだけを除去すれば安全ということではありません。間違いなく、食品内部にまでカビは浸透しています。ブルー・チーズは、適切な温度・湿度・工程管理のもとで熟成されるため、安全に美味しく食べることができます。カビには、タンパク質をアミノ酸に分解してうま味を出す、デンプンを糖に変える、あるいは脱水するといった効果もあります。カビを利用して作る食品はチーズに限りません。身近なところでは、カビの一種である麹菌を使って発酵させる味噌、醤油、日本酒があり、麹菌を使って乾燥させる鰹節、あるいは納豆菌で発酵させる納豆などがあります。
近年、ポーランドで発掘されたチーズ作りの痕跡から、チーズの歴史は、少なくとも7,500年以上とされているようです。最初期のチーズは、羊や山羊のミルクを原料としていたようです。ブルー・チーズが、文献上、初登場したのは2,000年前とされます。フランス南部の山中にあるロックフォール=シュル=スールゾン村で、洞窟に忘れた羊のチーズに青カビが発生していたことから、偶然、発見されました。人口700人というロックフォール村は、今でもブルー・チーズの世界的産地として知られています。ちなみに、世界三大ブルー・チーズとされているのは、代名詞的存在でもあるロックフォール、9世紀頃から作られているイタリアのゴルゴンゾーラ、18世紀にその名を知られるようになったイギリスのスティルトンということになります。
ロックフォールは、青カビの刺激が最も鮮烈で、エッジの効いた味になっていると思います。今でも一番人気のブルー・チーズであり続けているのも、うなづける話です。ゴルゴンゾーラ、スティルトンは、その順にマイルドさが増していきます。知っている中で、最も美味しいと思うブルー・チーズは、スペインのカブラレスです。カブラレスは、スペイン北端のアストゥリアス自治州のカブラレス村で作られています。ブルー・チーズは、青カビを注射器でカードの中に入れるのが一般的ですが、カブラレスの場合、洞窟内で自然に付着させています。最も古い製法を維持しているわけです。青カビの刺激、牛乳のコク、塩味のバランスが絶妙だと思います。ギネス・ブックによれば、カブラレスは、最も高価なブルー・チーズとされているようです。
ブルー・チーズを使った料理は数多くあります。独特の風味をソースに活かそうと思えば、どんな料理にでも使えるとも言えます。多く見かけるのは、パスタやピッツアだと思います。ゴルゴンゾーラのピッツアには、蜂蜜がよく合います。青カビの刺激と蜂蜜の甘さが良いコラボレーションとなります。私は、デザートとして、ブルー・チーズにメープル・シロップをかけて食べます。その際には、ロックフォールが一番合うように思います。ただし、カブラレスに関して言えば、そのまま、何もかけずに、風味を味わいます。幸いなことに、数ヶ月に一度行われるチーズ好きの会で、毎回、カブラレスを楽しむことができます。これ以上、円が安くならないこと、航空料金が高くならないことを願うばかりです。(写真出典:rakuten.co.jp)
