京都の1年は、二十四節気、さらにそれを5日間に区分した七十二候に基づいて進みます。京都では、日によって食べるものが決まっているとも言われますが、食べるものだけでなく、行うべきことも、それぞれの日によって定められています。例えば、全国的に、節分は、豆まきか恵方巻の日といった認識が一般的だと思います。ところが、京都では旧暦の大晦日として、様々な迎春の行事が行われます。有職故事の塊のような街ですが、千年の都ゆえ、いにしえの日々が保たれてきたとも言えます。また、京都は、そうした生活を支える職人たちの街でもあります。和食文化の中心のような京都ですが、意外にもパン好きな街としても知られます。不思議なことだと思っていましたが、忙しい職人の手軽な朝食や昼食としてパン食が普及してきたのだそうです。
番組は、京都の街と人との関わりがにじみ出るよう構成されています。ドラマは、分かりやすいテーマがさりげなく描かれています。さらりと余韻を残すような演出が腕の良さを感じさせます。その演出スタイルは、他人との距離を上手に保つ京都人らしさに通じるものがあります。時にコミカルであることも、京都らしさの一つです。また、モダンで上質な生活や店も登場しますし、京都の国際性も織り込まれていますが、それらは千年の都が存続してきた理由の一つでもあります。寺院や街の紹介も、ありきたりな観光目線ではなく、京都人の生活という視点から紹介されています。料理のパートも、”手も口もよう動く京女”大原千鶴を通じて京都人が描かれています。時に京都人のインタビューも挿入されていますが、わざとらしさや唐突感のない仕上がりになっています。
人物や店のモデルが明確である点も面白いと思います。NHKという制約はあるものの、本物にこだわったということなのでしょう。シーズン2「Blue 修行中」の料亭萩坂のモデルは「高台寺和久傳」なのでしょう。シーズン1では、大原千鶴の幼少期からの友人として女将本人が登場しています。お茶屋が多い京都で料亭・和久傳は料理自慢の店として知られます。かつて若女将と呼ばれていた女将は、上品な美人ですが、気さくで機転も利くことから大人気でした。初めて和久傳に行った際、若女将が見送りに来なかったので、如何なものかと思いました。その後、皆で祇園町のバーへ繰り出しました。30分ほどすると、若女将が非礼を詫びながらバーに入ってきました。30分ばかり、お酌をして、愛想を振りまいて帰って行きました。その対応の見事さ、そして我々のいるバーが即座に分かるという京都のネットワークの凄さに感心したものです。
作・演出の源孝志は、CMやTVバラエティー制作の後、ドキュメンタリーやドラマを手がけ、芸術祭大賞はじめ数々の賞を獲得している才人です。実に斬新なアプローチで京都と京都人を描いた本作も、ATP(全日本テレビ番組製作社連盟)賞グランプリを獲得しています。京都出身だろうと思いましたが、実は岡山の人でした。ただ、大学が立命館なので、京都には慣れ親しんでいたわけです。また、音楽を担当しているのは阿部海太郎です。舞台の音楽を多く手がけている人のようですが、そのセンスの良さには感心させられます。シーズン1のエンディング・テーマには、ベンチャーズ作曲、渚ゆう子歌でヒットした「京都慕情」が使われています。武田カオリが歌うスロー・テンポなヴァージョンが、あの「京都慕情」だと気付くまでには多少時間がかかりました。半世紀以上も前のヒット曲が、これほどの名曲だったとは驚きです。(写真出典:nhk-ondemand.jp)
