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EXPO2025 |
高校の文化祭で、化学部に潜り込み、展示の準備を手伝いました。ちょっとした悪ふざけをしてみたかったからです。それは、近所で拾った石を麗々しく「月の石」として展示することでした。万博と月の石の熱狂に対する皮肉のつもりでした。単なるシャレにも関わらず、結構、人が集まりました。一番驚いた反応は、他校の女子生徒から「これは本物ですか?」と聞かれたことです。人類はまったく進歩していないなァ、とつくづく思ったものです。人類の進歩は、直立二足歩行を行って以来、止まったままだとされます。人間は、DNAレベルでの進化を止めた唯一の生物とも言われます。動物の進化の頂点に立つという意味で、自らを霊長類とも呼びますが、1対1では、いまだに大きな熊や目に見えないほど小さなウィルスにも負けるわけです。
直立二足歩行によって、自由になった両手が道具を使うことに、自在に使えるようになった喉が言語の発達につながります。道具の使用、そして言語を駆使した集団の形成によって、人類は他の生物を圧倒していくことになりました。そして道具は、進化に進化を遂げ、ついには月にまで行けるようになったわけです。人類の進歩と言われているものは、道具の進化に過ぎません。道具を進化させたことが人間の進歩だと理解しているわけです。むしろ、道具を得たことで、人間はDNAレベルでの進化を止めています。また、道具の進化は、自然の秩序を破壊することにつながり、ついには地球の破壊というレベルにまで到達します。人類は自分で自分の首を絞めるという事態に陥ったわけです。1970年大阪万博は、この問題をテーマとしたわけですが、更なる道具の進化で問題を解決しようとした点に間違いがあったとも言えます。
一方、集団化、組織化に関しては、農耕の開始とともに急速に高度化したものの、エジプト、ギリシャ、ローマといった古代文明以降、大きな進化は成し得ていないと思います。それどころか、農耕が育んだ所有という概念がゆえに、個人対個人、個人対組織、組織対組織という対立構造を常に抱えることになります。この悩ましい問題の解決に向けて、人類は、法律、制度、思想、宗教といった様々な試みを行ってきましたが、いまだ、決定的な解決策や有効な対策を獲得できていません。人類は、DNAレベルだけでなく、思考レベルにおいても、進化を止めていると言えます。ガザ回廊での虐殺やウクライナでの戦闘は、道具だけが進化し、人間は一切進化していないということに関する明白な証拠でもあると思います。
それどころか、道具の進化は、人間を退行させるという段階に入りつつあると思います。アメリカのIT産業では、求人数が大幅に減ったようです。AIによる業務の代替が進んでいるわけです。AIは、多くの職業を奪うだろうと言われます。AI化が進むと、人間は、より高度で、より創造的な仕事に専念できると言われますが、そのような仕事がどれほど存在するのでしょうか。同時に、AIの普及は、人間の考えるという能力を奪う可能性すらあります。道具の進化は、地球を破壊するだけでなく、人間をも破壊しかねないレベルに入ったと言えるのでしょう。イギリスの歴史学者ジョン・アクトン卿は「人間が歴史から学ばないことは歴史が証明してる」と語っています。道具の進化は、本当に人間を幸せにしてきたのか、という歴史考察が必要だと思えます。(写真出典:expo2025.or.jp)