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モンロー大統領 |
ブラジルへの内政干渉も酷いものですが、トランプのネタニヤフ支持は、ガザでのジェノサイドという人類に対する極悪犯罪を引き起こしています。さらに、ネタニヤフは、イラン、シリアへの越境攻撃などやりたい放題です。もちろん、トランプ以前から、米国は、国内のユダヤ人の経済的影響力ゆえにイスラエル支援を続けてきました。しかし、ネタニヤフは、扱いやすいトランプの再選を前提に、ジェノサイドに踏み切ったのでしょう。もはや、イスラエルは、ホロコーストについて語る資格はありません。2千年前に国を追われ流浪の旅を強いられたユダヤ人ではありますが、パレスティナ人を暴力で追い払ってイスラエルを建国し、武力と入植をもって領土を拡大してきました。シオニストは、流浪の苦難を語る資格もないと思います。
あろうことか、ネタニヤフは、トランプをノーベル平和賞に推薦したと言います。トランプに相応しいのは、ノーベル賞ではなく、国際裁判所の被告席です。MAGA(Make America Great Again)という主張を否定するつもりはありません。ただ、”アメリカ・ファースト”という言葉は国粋主義そのものであり、他国を見下し、その犠牲をまったく厭わないということを意味します。トランプ人気の尻馬に乗った小池百合子が”都民ファースト”と言い、参政党が”日本人ファースト”と主張していますが、とんでもないことだと思います。さらに言えば、トランプのアメリカ・ファーストの実態は、”ミー・ファースト”である場合が多いと思われます。チンピラ大統領の人気取りのために、世界中の人々が犠牲になることなど、もってのほかと言わざるを得ません。
アメリカ・ファーストという言葉自体は、トランプ以前から存在し、アメリカの伝統と言える面もあります。そもそもアメリカ・ファーストという言葉は、19世紀中葉、ユダヤ系の政党が、カトリック系の移民排斥を訴え、キャッチフレーズとしたことが始まりです。その後、欧州で第一次世界大戦が勃発すると、ウィルソン大統領が、中立を宣言し、この言葉を使います。そして、第二次世界大戦に際しては、アメリカ第一主義委員会(The America First Committee)が結成され、不参戦と孤立主義を訴えます。ヘンリー・フォード、ウォルト・ディズニー、チャールズ・リンドバーグらも参加していました。しかし、次第に反ユダヤ、親ファシズム色が露わになり批判されます。結果、パールハーバーを機に、アメリカは参戦、委員会は解散しています。
アメリカ・ファーストは、アメリカ伝統のモンロー主義に基づいているとも言われます。19世紀初頭、建国間もないアメリカのモンロー大統領が打ち出した米州・欧州の相互不干渉政策です。アメリカの中立志向、孤立主義と理解されることが多いように思われますが、その実態は、南北アメリカにおけるアメリカの覇権を主張したものです。中南米や南米の諸国にとっては、ふざけるな、という話であり、大いに迷惑も被ってきました。今般のブラジルへの内政干渉など、まさにモンロー主義の伝統に則っているとも言えます。トランプの政策は、アメリカの弱体化とともに、国際的リーダーという立場から自国重視へと急激な転換を図っているという面もあります。それは理解できるとしても、アメリカ経済の弱体化は、アメリカが自ら判断して進めてきた産業構造転換の結果であって、他国のせいではありません。(写真出典:y-history.net)