2025年6月18日水曜日

アンド-2

待望されていたスター・ウォーズ「アンド-(Andor、邦題キャシアン・アンド-)」のシーズン2がリリースされました。期待に違わぬ出来になったと思います。アンド-では、銀河帝国の皇帝パルパティーン(ダース・シディアス)が冷酷な独裁者という本性を露わにしていくなかで、抵抗勢力が徐々にネットワーク化し、反乱同盟軍になっていく過程が描かれています。そして、それは辺境の盗賊に過ぎなかったキャシアン・アンド-が、革命家となり、反乱同盟軍に参加するという覚醒の物語でもあります。つまり、キャシアン・アンド-は革命そのものだとも言えます。民主主義に陰りが見え、独裁的なリーダーが幅を利かせる昨今の世界情勢を見れば、アンド-が多くの共感を得ていることは理解できます。

スター・ウォーズは、1977~2019年にかけて、スカイウォーカー・サーガと呼ばれる本編全9話が公開されました。加えて、本編の前日譚、後日譚が、スピンオフ作品として公開されています。うち劇場で公開されたのは、「ローグ・ワン」(2016)と「ハン・ソロ」(2018)でした。ハン・ソロが興行的に不発だったために、以降の実写版スピンオフ作品は、TVシリーズとして製作、公開されています。ただ、2026年、久々に劇場版として「マンダロリアン・アンド・グローグー」が公開予定と発表され、今から盛り上がりを見せています。マンダロリアンは、実写版スピンオフの7シリーズの皮切りであり、2019年から3シーズンが公開されました。本編で語られなかったマンダロリアンの世界観、そしてグローグーの愛らしさが人気を高めた理由なのでしょう。

マンダロリアンとボバ・フェットに登場したグローグーは、ヨーダと同じ種族の幼児であり、ベイビー・ヨーダとも呼ばれます。未熟ながら強いフォースを持っています。スピンオフ系では最も人気のあるキャラクターだと思います。人気はグローグーに負けるとしても、スピンオフ系のなかで最も優れた作品はアンドーだと思います。スター・ウォーズ第1作となった「エピソード4/新たなる希望」は、ルーク・スカイウォーカーが、入手した設計図をもとに、反乱軍とともに銀河帝国のデス・スターを破壊するまでが描かれています。ローグ・ワンは、ジン・アーソとキャシアン・アンド-が命を懸けてデス・スターの設計図を盗むまでの物語であり、アンド-は、さらにその前日譚として、キャシアン・アンド-が革命家になっていく過程が語られます。

アンド-の魅力は、キャシアン・アンド-の地味で人間臭いキャラクター設定にあるのではないかと思います。スター・ウォーズに登場する人物たちは、当然のことながら、エッジの効いた、いわば漫画的なキャラクターばかりです。そのなかにあって、キャシアン・アンド-は、まるでLAを舞台とする警察ものの主人公のようでもあります。運動能力も高く、飲込みも早いのですが、フォースにはまったく無縁。素っ気ない見かけですが根はやさしく、現代人のように悩み、人を愛します。アンド-という作品が持つ政治的な今日性ゆえに、このようなキャラクター設定が行われ、派手さには欠けるディエゴ・ルナがキャスティングされたのでしょう。アンド-は、その政治性の高さにおいて、シリーズ中、最もユニークな作品かもしれません。

キャシアン・アンド-は、ローグ・ワンのラストで壮絶な最期を遂げています。これもキャシアン・アンド-らしくていいと思います。死んだので、これ以上、キャシアン・アンド-を主人公とする作品が作られることはないと思われます。異色作アンド-は、それでよいのだと思います。余談ですが、ジョージ・ルーカスが黒澤明ファンであることから、スター・ウォーズでは、結構、日本の文化や言葉が使われています。アンド-も、実は“安藤”なのではないかと思い、調べてみましたが、よく分かりませんでした。もし、安藤にインスパイアされたのだとすれば、どこの安藤なのか気になるところです。少なくとも安藤百福ではないと思うのですが。(写真出典:imdb.com)

アンド-2