ヘリコプターの回転翼(ブレード)は、平面的に作られており、ローターと呼ばれます。対して、ドローンのブレードは、飛行機のプロペラや船のスクリューのように揚力を生むねじりが加えられており、プロペラと呼ばれます。ヘリコプターは、ローターのピッチ角と回転面の角度を変えることによって、上下・前後・左右への動きを、あるいはホバリングを可能にします。対してドローンの場合、プロペラの角度は固定されていますが、4つのモーターの回転数を、それぞれ独立的に変えることで自在な動きを生み出します。ドローンが4つ以上のモーターを必要する理由がここにあります。ヘリコプターは機械的技術の進化によって生み出され、ドローンはコンピュータによる制御や通信といった電子的技術の革新が生み出したと言えます。
無人機の歴史は、軍事用から始まっています。第二次大戦中には、無線による遠隔操作の研究が始まり、試作もされています。英国では、練習機をベースとして遠隔操縦による標的機クイーン・ビーが開発されています。しかし、技術的に問題が多く実用化には至っていません。戦後になると、軍用機のジェット化に伴い、ミサイルやレーダーの開発も盛んに行われます。同時に、テストで使われる無線誘導の標的機の開発も進むことになりました。この頃、米軍では、英軍のクイーン・ビー(女王蜂)に対抗して、これら無人機をドローン(オスの蜂)と呼び始めました。1951年には、ジェット推進の標的機ファイヤ・ビーが登場します。以降、このモデルが無人偵察機、無人攻撃機へと展開されていくことになります。
アフガニスタン紛争では、アメリカ国内の基地から遠隔操作されたドローンで、ゲリラを偵察・追跡し、かつ攻撃するという戦法が注目されました。また、ウクライナの戦場では、徘徊型兵器とも呼ばれる自爆型ドローンも多く投入されています。誘導ミサイルとは異なり、ターゲットを見つけるところから行うわけです。かつて、機銃を撃ち合った戦闘機のドッグファイトは、遠方からミサイルを打ち合う空中戦に変わりました。また、昨今では、遠隔操縦の無人爆撃機まで開発されているようです。このような変化を踏まえれば、もはや軍用機は、すべてドローン化されるのだろうと思います。一方で、ドローンの遠隔操作を行うパイロットは、精神面も含めた負荷が高いとも言われますが、操縦自体もAI化されていくのでしょう。
兵士の死傷率は改善するどころか、兵士そのものが不要になるのかもしれません。ただ、武力攻撃を判断する際のハードルが下がると、一般市民の犠牲が増える可能性もあります。また、ドローン化は、なにも空に限った話ではありません。自動操縦や遠隔操縦の自動車、電車、船舶まで開発され、一部は実用化されています。クワッドプロペラを用いた空飛ぶ車の販売も始まっています。遠くない将来、全ての移動体・飛行体が、AI搭載のドローンとなり、自動運転化されていくのでしょう。しかし、社会の標準として実装されるまでには、それなりに時間がかかるものと思われます。技術やインフラ整備の問題もありますが、倫理観の議論、その上に成り立つ法令の整備が簡単に進むとは思われないからです。(写真:米軍Global Hawk 出典:wired.jp)