2024年放送中の「光る君へ」は63作目にあたります。よく続いたものです。私は、高校時分までは見ていましたが、それ以降はほとんど見たことがありません。そもそも、話がブチブチ途切れ、TV局の都合にあわせて見なければならない連続TVドラマは性に合いません。アメリカのTVシリーズ等は見るようになりましたが、あくまでもこっちの都合に合わせて、ビデオ、ネット配信で一気に見るスタイルです。1961年に放送が開始されたNHKの連続テレビ小説、いわゆる朝ドラも、ほとんど見ていません。記憶があるのは「おはなはん」(1966)だけです。小学校6年生でしたが、クラスのほぼ全員が教室のTVにかじりつき、昼の再放送を見ていました。愛媛県が舞台のドラマであり、仲間内では伊予弁が流行しました。
娯楽の多様化とともに、大河ドラマも、朝ドラも、視聴率は低下傾向にありますが、特に2010年あたりからは低迷しているようです。大河ドラマでは、平均視聴率24.5%を挙げた2008年の「篤姫」が最後のヒット作と言われています。アジア各地でもヒットしたようです。幕末・明治ものは視聴率が低い、女性が主人公の大河はコケるといった定説を覆したと言われます。女性の社会進出が進みつつあった頃、篤姫がロールモデルとして人気を集めたようです。脚本を書いた田渕久美子氏の講演を聞いたことがあります。圧倒的に歴史ものが多い大河ドラマですが、女性に関しては、脚本の前提とすべき文献や資料が極めて少ないとのこと。そのことが、逆に創作の自由度につながると語っていたことが印象的でした。
それにしても、人気のある大河ドラマが戦国ものに集中している点は面白いと思います。歴代大河ドラマの視聴率ランキングを見ると、第1位の「独眼竜政宗」(1987年、39.7%)、第2位の「武田信玄」(1988年、39.2%)はじめ、戦国ものが上位を占めています。江戸期以降、文芸や芸能を通じて広く知られることになった人物や事件が多く登場することが主な要因なのでしょう。また、合戦シーンや権謀術策といったドラマ的見所に富んでいること、あるいは、舞台が、東京、京都に集中することなく全国各地に広がっていることも人気の一因なのかもしれません。加えて言えば、田渕久美子氏の言うとおり、幕末・明治期に比べて文献が少ないことが原作や脚本の自由度を高め、結果、ドラマを面白くしているのかもしれません。
だからといって、その影響力からすれば、大胆な仮説に基づいてドラマを作るわけにもいかないと思います。司馬遼太郎原作の大河ドラマは、1968年の「竜馬が行く」はじめ、実に6本もあります。国民的作家と呼ばれる人だけに、納得できる話です。ただ、その視聴率を見ると、必ずしも高くはありません。幕末・明治ものが多いこともあるのでしょうが、やや押しつけがましいところがあったり、いわゆる司馬史観が禍している面もあるのかもしれません。司馬遼太郎の本が面白いことは間違いありませんが、明治期を明るく希望に満ちた時代として手放しで絶賛する姿勢には疑問の声も少なくありません。明治時代に関する日本人の認識は、大河ドラマを通じて広まった司馬史観の影響が大きいと思います。個人的には、明治から敗戦に至る時代は、洋服を着た武家政権、つまり暴力の時代でもあったと思っています。(写真出典:nhk.or.jp)