40年ほど前までは、砂糖とミルクを入れて飲む人が6割を超えていたのですが、最近では、ブラックが5割、ミルクだけが2割5分となり、砂糖とミルクを入れる人は2割程度にまで減ったようです。コーヒーを飲む文化が定着し、一般化したことが、その背景にあると言われます。コーヒーの味が分かるようになったというわけです。ただ、日本に輸入されるコーヒー豆の品質が良くなったこと、苦味が強かったインスタント・コーヒーの味が改善されたことも関係しているように思えます。また、日本発祥の缶コーヒーも、かつてはコーヒーではなくコーヒー飲料だけでした。ところが、1980年代にはブラック・コーヒー缶が発売され、人気を博します。データによれば、日本のブラック・コーヒー化が一段と進んだのは1990年代でした。
1996年に日本1号店を銀座に出したスターバックスの影響も大きかったのではないでしょうか。アメリカでは、1970年代あたりから、シアトルのコーヒー・ショップが、深煎りコーヒーを楽しむセカンド・ウェーブという流れを作ります。アメリカンとも呼ばれる浅煎りのコーヒーに慣れ親しんだアメリカ人にとって、深煎りコーヒーは新鮮な味だったのでしょう。日本に上陸したスタバは、おしゃれな雰囲気もあって、瞬く間に日本中に店舗を拡大します。現在、スタバは、全都道府県に、約2,000店舗を展開しています。スターバックスは、アメリカだけでなく、欧州以外の国に深煎りコーヒーの味を広めたとも言えます。2000年代に入ると、コーヒー豆の産地にこだわるサード・ウェーブが登場します。深煎りコーヒーへの反動だったかもしれません。
2015年、カリフォルニア州オークランド発祥のブルーボトル・コーヒーが清澄に店を出し、サード・ウェーブを日本に伝えました。コーヒー豆の品種や産地の違いを楽しむというサード・ウェーブの流行が、ブラック・コーヒー派の拡大に寄与したのかもしれません。また、ブラック化には、高齢化が大きく関係しているという説もあります。人は年齢とともに苦味に鈍感になっていくのだそうです。確かに、データを見れば、高齢になるほどブラック・コーヒー派が多くなります。もう一つの大きな要因は、健康指向の高まりではないかと思います。かつて喫茶店のテーブルには、角砂糖やブラウン・シュガーが置かれていました。ある時期から人工甘味料が加わりましたが、今では卓上の砂糖類はほとんど見かけません。
面白いことに、日本でブラック・コーヒーと言えば、砂糖もミルクも入れないコーヒーを指します。ところが、欧米では、ミルクを入れないのがブラックであり、砂糖を入れてもブラック・コーヒーと呼ばれます。まったく好みの問題ではありますが、個人的には、酸味を楽しむならブラック、コクを楽しむならミルク入り、だと思っています。いずれにしても、コーヒーの楽しみ方は、世界各地、実に様々です。コーヒーに加えるものと言えば、概ね、砂糖、ミルク系、スパイス類が代表的なものとなります。他にも、リキュール類、卵(エッグ・クリーム)等もあります。また、フレイバー・コーヒー、さらには紅茶とのブレンドまであります。各地の気候・風土にも依るのでしょうが、豆の種類や入れ方とも関わって多様性が生まれたものと思われます。(写真出典:tabelog.com)