2023年12月9日土曜日

青島食堂

青島食堂宮内駅前店
久々に新潟へ行ってきました。今回の目的は、従兄弟の絵画の個展を見ることでしたが、時間的には余裕のある旅だったので、まずは長岡で新幹線を降りて信越本線に乗り換え、隣の宮内駅へ向かいました。長岡市内の宮内は、酒・味噌・醤油の醸造所が多い摂田屋という町で知られます。とは言え、駅前には、一切、人の気配のない寂れた町です。ところが、駅の正面にある古びた平屋の前にだけ行列があります。青島食堂です。宮内店は、青島食堂の最も古い店舗であり、かつては本店と通称されていたこともあります。ただ、現在8店舗を展開する青島食堂に本店は存在しません。面白い発想です。スープと麺を一ヵ所で作って各店舗に届けることで、均一の味を目指すという青島食堂の姿勢の現れなのでしょう。

青島食堂は、1961年、宮内駅前に、ごく普通の食堂としてスタートしました。ところが、そのラーメンが大人気となり、50年前にラーメン専門店へと衣替えします。以来、変わらぬ味と人気を保ち、行列が絶えることがありません。新潟四大ラーメンの一つ”長岡生姜醤油ラーメン”というジャンルの発祥の店でもあります。私が、青島ラーメンを初めて食べて感動したのは2004年の暮れでした。当時、既にこのジャンル名は存在していましたが、まだ全国区にはなっていませんでした。しかし、1996年、武蔵・青葉・くじら軒の開店に始まるラーメン・ブームが起きると、徐々に新潟四大ラーメンも知られるようになり、青島食堂にも、全国からラーメン好きが集まるようになります。

青島ラーメンは、とにかくマイルドです。まろやかで優しく、それでいて豚と醤油の旨味をしっかり味わえる青島ラーメンは、毎日でも、毎食でも食べられます。黒い醤油味のスープには、どこにもまったく角というものがありません。生姜醤油ラーメンというジャンル名の由来にもなっている生姜は、スープを炊く際、豚の臭みをとるために、潰して大量に加えているようです。麺は、小麦のふくよかさを十分に感じさせる自家製の中細麺。薄切りにしたウデ肉のチャーシューには旨味が詰まっています。他の具材は、メンマ、ナルト、海苔、ほうれん草、ネギ。創業時から、何一つ変えていないと聞きます。余計なものを入れない、まさに中華そばの王道です。

スープと麺が同じなので、各店舗の味は同じはずですが、作り手の個性が出るのか、皆、多少の違いがあります。私は、8店舗中、7店で食べましたが、宮内の曲新町店が一番のお気に入り、次いで宮内駅前店です。新潟市内にも4店舗ありますが、どうも宮内の店舗とは味が異なり、ややマイルド感が薄れ、すました味のように思えます。10年ほど前、秋葉原のはずれに東京店も出しました。懐かしくて、何度か食べにいきました。確かに青島食堂の味ですが、少し油っぽい印象を受けました。それでも、宮内へ行かずに青島ラーメンが食べられるので、実にありがたい存在です。開店当初から、青島ラーメンの味を知る人たちが集まっていましたが、徐々にその名が知られるようになり、いまや連日の大行列です。

新潟四大ラーメンとは、長岡生姜醤油の他に、”三吉”や”蓬莱軒”などの新潟あっさり醤油、”杭州飯店”や”大むら食堂”などの燕背脂、”こまどり”や“東横”などの新潟濃厚味噌です。新潟あっさり醤油は、飲んだ後の締めに最適です。小針の住宅街のなかにある隠れた名店”味みつ”も棄てがたい味です。新潟市内で、私が最も好きだった店が”石門子”です。毎朝、店主が海で採ってきた貝類を出汁にしたラーメンは絶品でした。残念ながら、店主の体調が悪く、廃業しました。新潟濃厚味噌も熱烈なファンが多いのですが、私はどうもピンときません。燕の背脂ラーメンは、全国的に若者たちの人気を集める背脂系の元祖です。燕のラーメン屋の店内は、慎重に歩かなければならないほど油まみれです。不味いわけではないのですが、どうも人間の食べるもののようには思えません。(写真出典:walkerplus.com)

マクア渓谷