2023年7月7日金曜日

血液型と性格

ABO式血液型による性格分類のブームは、1970年代から始まりました。事の起こりは、能見正比古の一連の書籍でした。放送作家や編集者であった能見正比古は、独自にデータを収集して、血液型と気質や性格に一定の関係があることを唱えました。あくまでも傾向であって、科学的な因果関係に基づくものではありません。また、能見によれば、傾向が発現する確率は1/4程度とも言っていますが、データ収集に問題があるという批判もあります。とは言え、この話に飛びついたマスコミによって大ブームが起こり、ほぼ占いレベルの話として拡散していきます。当時は、誰もが血液型の話をしており、血液型を当てるというお遊びがごく一般的に行われていました。

ちなみに、これは日本に限ったブームであり、海外では自分の血液型すら知らない人が多いそうです。能見正比古による血液型別の気質の概要は以下のようなものです。       O型  生きる欲望やバイタリティが強く、目的指向型。                 A型  生き甲斐を求めるタイプで感情や欲求は抑制的。                B型  束縛されることを嫌い、自由な発想を好むマイペース型。            AB型  ドライな合理派で、二面性を持つ。                      人間の気質など複雑なものだと思いますが、四分類という大雑把な区分によって、何となく当てはまるような気がしてくるという面もあるのでしょう。

若い頃、人事部で人事情報データベースを作ることになり、私は、血液型も入力することを主張しました。従業員が緊急輸血を必要とする場合等に役立つというのが表向きの理由です。正直なところは、血液型と気性・性格との関係、そして、それが適正配置にどう影響するのかについて興味津々だったのです。まさに個人的趣味の世界です。議論の結果、私の主張は採用され、従業員の血液型は人事データベースに収録されました。記憶では、一度だけ、実際に、従業員の緊急輸血のために、データベースが役立ったことがありました。必要だったのはAB型の血液でしたが、病院に在庫がなく、会社に協力が求められたのです。ピンポイントでの献血要請が功を奏し、無事に輸血できました。私は、鼻高々でした。

適正配置という観点でも面白い結果が出ました。日本人の血液型分布は、A・O・B・ABの順に、4:3:2:1と言われます。本社の部署別に分布を見たところ、営業本部系はA型が突出し、企画系はB型が多くなっていました。当時は、まだ高度成長期の匂いが残る時代でした。営業系と言えば、目標貫徹のために、滅私奉公、24時間勤務、イケイケどんどんといった傾向が色濃くありました。まさにA型の規律を重んじるチームプレイヤーという気質が合っていました。対して、企画系は、ムードに流されず、ユニークなアイデアを出すという点で、まさにB型が適していました。頻繁に人事異動が行われる会社でしたが、結果的には、血液型タイプに応じた適正配置が行われているように思いました。

血液型による適正配置という考え方は、戦前にも存在しました。1927年、教育学者の古川竹二が発表した血液型による気質の研究は、広く注目を集めたようです。これに目をつけた帝国陸軍は、兵隊の適正配置によって軍を強化しようと組織的な研究を行います。ただ、有為な結果を得ることは出来ず、早々に中止されたようです。血液型による性格分類は、科学的根拠が乏しく、また、差別の温床にもなるということで、下火になりました。ただ、今でも、恋愛占いなどでは、結構、人気があるようです。いずれにしても疑似科学、似非科学とされた血液型性格分類ですが、当時、多くの人たちが当たっていると思ったことの方が、よほど面白い現象だったようにも思います。(写真:能見正比古「血液型でわかる相性」 出典:amazon.co.jp)

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