オリンピックと並ぶ世界最大のスポーツ・イベントであるFIFAワールド・カップには、”もう一つのワールド・カップ”と呼ばれる戦いがあります。スポーツ関連メーカーの戦いです。中心となるのは、ウェア、シューズ、ボールなどです。ボールは公式球が決められます。今回の公式球は、アラビア語で旅を意味するアディダスの”アル・リフラ”が選ばれています。ウェアは、当然、チーム毎に決められます。今回は、ナイキが13チーム、アディダスが7、プーマが6と続きます。以下、ニューバランス、ヒュンメル、カッパ等も採用されています。一方、シューズに関しては、個人の選択となっており、同じチームでも様々なブランドが使われています。公式球との相性からして、アディダスが有利とも言われます。
最も競技人口が多いとされるサッカーですから、関連商品の市場規模も膨大なものになります。ウェアは、選手だけでなく、サポーターも着用するので、べらぼうな販売数になります。シューズは、競技者個人の相性にもよりますが、やはり活躍した選手が着用したシューズは人気となります。サッカー・シューズは、特許の塊だと聞きます。スパイク・シューズ全般に言える機能性、軽量性、耐久性などに加え、サッカー・シューズでは、ボールとの接触面における摩擦のあり方が大きな問題となります。サッカー・シューズは、ゴルフ・クラブに例えれば、ヘッド部分だとも言われます。選手のプレイ・スタイルやキックの特性によって、多種多様なニーズが存在し、パフォーマンスに大きな影響を与えます。
サッカー・シューズの売上トップ3は、ナイキ、アディダス、プーマです。アディダスとプーマは、1924年、ドイツで創業されたダスラー兄弟製靴工場を起源とします。1948年、兄弟はたもとを分かち、アディダスとプーマが設立されています。長い歴史を誇る欧州メーカーに比べれば、アメリカのナイキは新参者です。1964年、神戸のオニツカタイガー(現アシックス)の靴に惚れ込んだフィル・ナイトが、オレゴンに輸入総代理店をスタートします。1971年、代理店契約を打ち切られ、銀行の融資も断れたフィル・ナイトは、日商岩井の協力を得て、自社ブランドを立ち上げます。開発力と広告のうまさで、ナイキはトップ・ブランドに躍り出ました。そのきっかけとなったのが、1978年、ナイキの代名詞とも言えるエアソールの発売でした。
スパイク・シューズは、陸上競技用としてスタートしています。1868年、アメリカでウィリアム・カーチスが、自作し使ったのが起源とされます。1900年、イギリスのジョセフ・ウィリアム・フォスターが、後のリーボックを立ち上げスパイクの販売を開始しています。サッカーの場合、スパイクは極めて危険な代物となります。替わって、底面に突起を付けたスタッドが、1923年、ヒュンメルによって開発されています。デンマークのヒュンメルは、もともと1923年にドイツで創業された会社です。いずれにしても、今年の夏までには、”もう一つのワールド・カップ”の決着はついているものと思われます。本戦の方では、この4大会連続して欧州勢が優勝していますが、商売としては、ナイキに押されっぱなしのようです。ちなみに、オッズ上位の6カ国のユニフォームは、アディダスとナイキが半々となっています。(写真出典:livedoor.jp)