また、数年前、100人くらいが参加するコンペに出た際のことです。若い女性が、2オーバーでベスト・グロス賞を獲得していました。聞けば、高校卒業後、プロ・テストにチャレンジし続けて数年になるが、いまだ合格できないとのことでした。世の中には、ゴルフのお上手な方々が、結構います。ただ、プロ・ゴルファーの世界は、アマチュアとは、全く異なるスポーツだと言っても良いほど違うものなのだと思った次第です。しかも、プロ・ゴルファーになることがゴールではありません。そこには、熾烈を極める競争が待っているわけです。1打の差が天と地ほどの違いを生み出す世界です。アメリカでは、1打差が1~2億円の違いになることもしばしばです。
プロのゴルフ・トーナメントは、日々、厳しいトレーニングを重ね、最高の状態で臨んだとしても、優勝できなければ、意味がないという厳しい世界です。例えば、レースやコンタクト・スポーツの世界であれば、対戦相手の強み・弱みに応じたトレーニングを行い、相手の出方を見てかけひきすることができます。採点競技、射撃、アーチェリー等は、ゴルフに似ているかも知れません。ただし、ゴルフに満点というスコアは存在しません。結果的には、他者を上回るスコアを出せば優勝ですが、競技中は、ひたすらロー・スコアを削り出していかなければなりません。ゴルファーの最大の敵は、コースでも相手でもなく、自分自身だ、という言葉もあります。
プロ・ゴルファーの基本的な体力や技術力には、さほど大きな差はないようにも思います。格差を生み出しているものは、精神力の違いではないかと思えます。集中力、平常心、あるいは忍耐力といったことになりますが、それらが、18ホール、切れ目無く続くという持続性や安定性も欠かせません。プロ・ゴルファーの世界では、自分自身を信じることが最も大事だとも言われます。自信とは、妥協なきトレーニングを納得できるまで重ねて、はじめて生まれるものだと思います。つまり、プロ・ゴルファーは、常に、頂点の先、完璧の上を目指して、鍛錬を続けなければならいない宿命にあるわけです。マネー・レースとは、実に厳しい世界だと思います。
「バックコーラスの歌姫たち」というドキュメンタリー映画がありました。いつかはメインで歌うことを夢見ながら、バックコーラスとして歌い続ける歌手たちの話です。メイン・ヴォーカリストを凌ぐ歌唱力を持つ人たちも多い世界です。しかし、どれほど見事なコーラスを聞かせても、彼女たちの名前が世に出ることはありません。原題の「20 Feet from Stardom」が、とても印象的でした。ステージ上、メインとの6mの差は、なぜ生まれるのか。ショー・ビジネス界特有の仕組みもあるのでしょうが、登場人物の一人は「メインで歌いたいという気持ちの強さの違いだ」と言っていました。何に依らず、プロとアマの違い、あるいは一流と二流の違いは、技術力以上に、精神力の強さなのかも知れません。(写真出典:mori.co.jp)