2022年9月24日土曜日

おしゃべりなラジオ

2000年に、新商品を大々的にプロモートするためのメディア・ミックス計画を練っていたおり、代理店からラジオの活用を提案されました。意外な印象を受けました。TVで育った私たちからすれば、ラジオのリスナーは、さほど多いように思えなかったからです。ところが、地方では、依然、大きな影響力を持つと聞かされました。地方は、完全な車社会です。農作業に、通勤に、一家に一台ではなく、一人一台が必須という世界です。そして、車中では、ラジオがよく聞かれているというわけです。私が、車で聞くとすれば、好きな音楽であり、かつてはカセット・テープからCD、最近はBluetoothでスマホやミュージック・プレイヤーから飛ばします。それが当たり前と思っていました。

日本のラジオに関して、不思議だと思っていることがあります。音楽よりも、しゃべり中心の番組が多いことです。決してラジオに詳しいわけではありませんので、音楽番組も、あるいは音楽専門局も、結構、あるのかも知れません。ただ、音楽だけを流し続ける無数の局があるアメリカと比較すると、日本は、圧倒的にしゃべり中心のラジオ文化だと思えます。なぜ、そうなのか、ネットで調べてみると、諸説あるようですが、どうも定説はないようです。最も肝心なのは、日本のリスナーが、しゃべり中心の番組を求めているのか、ということです。ネットで調べると、2006年に、「放送研究と調査」という専門誌が行ったアンケート調査を見つけました。

リスナーが求めている番組の1位は「音楽中心の番組」の65%、2位は「ニュース・天気予報」の64%。この二つが群を抜いており、次いで「交通情報」の35%、「おしゃべり中心の番組」は32%で4位に過ぎませんでした。リスナーが音楽と情報を求めているにも関わらず、おしゃべり番組が多いということは、放送局側に何らかの事情があるということになります。局側の事情として、まずは楽曲使用料があげられます。JASRAC(日本音楽著作権協会)の規定によれば、基本的な算式は、1曲放送する毎にいくらと金額が決まっているようです。つまり、音楽を流さないことがコストダウンにつながるわけです。ただし、予算総額や効果との関係もあり、これがおしゃべり番組が多い理由の全てではないのでしょう。

もっと大きな要因は、日本の放送・電波規制にあるのではないかと思います。日本には商業ラジオ局が100、いわゆるコミュニティFMが300あるようです。対してアメリカでは、商業ラジオ局が7,000、非商業FM局が4,000以上もあると言われています。アメリカでは、ごく限られた、あるいはマニアックなターゲットに向けた、ごくごく細分化された番組編成が可能なわけです。数が限られる日本のラジオ局は、老若男女、全てのリスナーを想定した番組を流さざるを得ません。音楽に関しては、好みが大いに分かれるところです。日本のラジオ局にとって、音楽は、結構、扱いにくい番組なのでしょう。ということは、当然、スポンサーを探すことも難しく、放送局の営業面でも扱いにくい番組ということになります。

FM放送は、1970年代に本格化しました。FMは、音楽に適した電波であり、音楽番組が増えるものと期待しましたが、結局、おしゃべり中心になっていきました。おしゃべりなFM放送など、意味がないと思いました。そんなわけで、車を運転中にラジオを聞くことは希になり、聞くとしても米軍のFEN(極東放送網)ばかりでした。FENは、1997年からはAFN(アメリカ軍放送網)に代わりましたが、アメリカの匂いがすること、そして音楽中心であることが、お気に入りポイントです。ただ、どうしても音質が悪いので、たまに聞く程度ではあります。日本の放送・電波規制には、様々な議論があります。災害放送という役割が、規制強化につながっている面もあります。また、一方では、厳しい規制が、放送局を守ってきた面も否定できないはずです。ネットの時代、地上波TVも含め、根本から見直す必要がありそうです。(写真出典:pmall.gpoint.co.jp)

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