Void Check |
昨年の春、米国の年金を受給する日本人の間に衝撃が走りました。米国政府が国民に給付したコロナ義援金(Economic Impact Payments)の3回目の支払小切手が、年金受給者にも届いたのです。額面は、1,400ドル。現在、日本では、米国で発効された小切手の現金化は、旧シティ・バンクの業務を引き継いだSMBC以外では出来ません。もともとSMBCに口座をもっている場合には、すぐに現金化が可能です。口座を持っていた私の知人も、即座に現金化していました。口座を持っていなかった私は、口座開設から始めなければなりませんでした。早速に、ネットで手続きを行い、1,400ドルの使い方を考えながら、口座開設を待ちました。
ところが、その間に、コロナ義援金は、米国在住者に限った給付であり、私たちへの小切手の送付はミスであったことが判明します。IRS(内国歳入庁)は、そのホームページで、小切手は”VOID(無効)”と記載のうえ返送するよう求めました。がっかりしました。しかもご丁寧なことに、小切手を追いかけるように、ホワイトハウスから、バイデン大統領名義のレターまで送られてきました。小切手は届きましたか?厳しい状況だけど、皆でがんばりましょう、といった内容でした。もちろん、がんばります。ただ、大統領のお手紙を受け取ったのは、ミスが判明した後のことでした。
要は、現金化しなければいいわけですから、結局、私は、返送もしませんでした。知人たちは、皆、同じ対応を取っていました。ぬか喜びさせられただけでしたが、改めて、アメリカの行政の凄さを感じました。国民一人ひとりが、社会保障番号で管理されているので、こういう対応の早さには驚くべきものがあります。効率重視のアメリカの行政に対して、正確さ重視の日本の行政の遅さが、余計、気になりました。際立って両者の考え方の違いが出るのが、確定申告だと思います。米国では、全員、確定申告が基本ですが、申告に際しては、原則、エビデンスの添付は求められません。ただし、サンプリングによる調査が入り、虚偽申告している場合には、厳罰に処されます。
実に効率的な手法だと思います。日本の確定申告は、エビデンスの添付が求められ、エビデンスがある以上、そのチェックが行われるわけです。申告者にも税務署にとっても、相当の負荷がかかります。ミスが許されない国民性なのでしょうが、ミスは発生して当たり前です。ミスが発生しにくいシステマティックな対応は必要ですが、人海戦術でミスを防ぐことは、実に非効率で、コストがかかります。最近、日本でもe-taxの導入に伴い、エビデンスの扱いにも大きな変化があり、効率化が進みました。このような考え方の転換によって、さらに行政全般の効率化を進めてもらいたいと思います。それが民間の効率化にも大きな影響を与えます。(写真出典:linkeden.com)