うりずんの頃、南城市の”うどい”という琉球舞踊のショーを見せる小劇場へ行ったことがあります。”うどい”とは、ウチナーグチで踊りのことです。4月初旬、仕事で沖縄に行ったのですが、週末も居残り、一人で出かけました。レンタカーを借りて動くのが常道ですが、あえて路線バスで行ってみようと思いました。那覇から、車なら40分ほどのところですが、路線バスだと小一時間かかります。今は、随分ときれいでおしゃれになりましたが、かつての古びたバスターミナルから出かけました。ウチナーグチが飛び交う車内で、暖かな日差しを浴びていると、ついうとうとしてしまいます。最寄りのバス停で降りたのは私だけでした。あたりは、人家もまばらな、サトウキビ畑のなかでした。なお、現在は、住宅街の一角に越して、営業しているようです。
少し歩くと、“うどい”がありました。随分と辺鄙な場所にありますが、観光ルートとして団体客がバスで乗り付ける施設でした。予約したショーの時間まで、少し間がありましたが、待っているのは私だけで、いつまでもバスが到着しません。店の人に、もし客が私だけなら、次のショーまで待ってもいいよ、と伝えました。店の人は、前もって予約してもらったのだから、時間どおりにショーは行います、とのこと。いよいよ時間となり、劇場内にはいりましたが、やはり客は、私一人でした。ショーは、伝統に則り”かじやで風”から始まり、宮廷舞踊から雑踊りへと展開ました。琉球舞踊を一通り見せるというショーですが、那覇に、有りそうで無いスタイルです。那覇では「四つ竹」のようなディナー・シアターになります。
ショーも終盤というところで、「さぁ、みんなで踊りましょう」のコーナーが現われました。要は、カチャーシーの手ほどきをしたうえで、舞台と客席が一体となって踊り、沖縄を体験しようというわけです。うかつでした。団体客相手なら、当然のプログラムです。想定すべきでした。”みんなで”といっても、客は私一人です。舞台には5人ばかりの踊り手が並んでいます。私は、照れ屋なので、こういうのはどうも苦手なのですが、立たざるを得ませんでした。恥ずかしながらカチャーシーを踊り、恥ずかしながらカチャーシーを楽しんでしまいました。以降、島唄酒場などで、カチャーシー・タイムになると、積極的に踊っています。
”うどい”の経営者ご夫妻は、東京で琉球舞踊を教えながら、公演を行っていたようですが、なかなかうまくいかず、島に戻り、ショーを運営しているとのことでした。感じの良いご夫妻でした。ショーが終わると、タクシーを呼びましょうか、と声をかけられたのですが、のんびりバスで戻ることにしました。定刻をはるかに過ぎても、バスは来ませんでした。ただ、沖縄タイムと思えば、腹も立ちません。暖かな日差しを浴びて、のんびりサトウキビ畑を見ていました。バスを待つ間に、3人の農民が通り過ぎましたが、皆、挨拶をしていきます。うち一人のおじさんは、立ち止まって、色々と話しかけてくれました。残念ながら、言っていることは、さっぱり分かりませんでした。”うどい”でのカチャーシーも含め、うりずんの魔法にかかったような午後でした。(写真出典:ogb.go.jp)