単調になりがちな入院生活の中で、食事は唯一の楽しみとも言えます。とは言え、病院食は、すべての人に喜んでもらうことが目的ではありませんし、ミシュランの星をねらっているわけでもありません。あくまでも付帯的なサービスであり、あらかじめ決められたカロリー、バランス、塩分量などといった制約のなかで、メニューが考えられ、調理されています。制約が多い中で、単調にならないようにメニューを考えることは、なかなか大変なことだとは思います。慈恵医大の病院食で、もう一つ関心したことは、事前に1週間分の献立表が配られ、かつ、選択可能であったことです。例えば、朝食は、和食か洋食か選べました。その場ではなく、事前選択制にはなりますが、それでも良いサービスだと思いました。
一定の規模がなければ出来ない対応ではありますが、これまた他の病院に見習ってもらいたいと思います。30年前、かみさんが、NYで次女を出産した際の病院食は、メニューから選択する方式でした。さらには、退院前夜には、最上階にある特別室で院長夫妻とのディナーというオプションまでありました。もちろん選択はしませんでしたが、ここまでくると完全に商売ということになります。アメリカの医療費、および医療保険料が世界一高くなるわけです。一定以上の医療費は、すべて保険でカバーされる仕組みなので、患者は、より良いスタッフ・設備・付帯的サービスを備えた病院を求めることになります。病院サイドも、選択される病院を目指して、コストをかけます。これがアメリカの医療が世界一になった理由でもあります。
いうでもなく入院する目的は治療であって、食事ではありません。それは分かっていますが、病院食は、もう少し進化してもよいのではないかとも思います。塩分やカロリーを抑えながらうま味だけをアップするメニューの開発、食欲を削ぐプラスティックの食器の改善、あるいは冷凍やレトルト食品を活用してメニューの多様化を進めるなど、すぐにでも出来そうな気がします。恐らく、健康保険制度によるコストの制約が、大きな壁になっているのでしょうが、例えば、一部オプション化してもいいようにも思います。いずれにしても、関係者の皆さんには、もう一段のご努力をお願いしたいところです。(写真出典:ja.wikipedia.org)