2022年3月18日金曜日

病院食

昨年、新型コロナ・ウィルスに感染し、入院したという後輩がいました。味覚障害はあったのか、と聞くと、味覚障害なのか、病院食のまずさなのか、判然としなかったと言っていました。私も、4年前、急性腎不全で入院した際、病院食のまずさに辟易しました。5日間の入院で10kg痩せました。主な理由は、治療のために、体の水分を抜いたためですが、不味い病院食の影響も大きかったのではないかと思います。翌年には、腎不全の原因となった前立腺肥大を治療するため、慈恵医大付属病院に入院することになりました。病院食対策を行って入院しようと考えました。

病院食がまずいのは、うま味と塩分の少なさだと思います。そこで、スプレー容器に入れた白だし、ゆかり、カレー味のふりかけを準備しました。ところが、慈恵医大の病院食は、ごく普通に美味しく、何一つ残すことなく、たいらげました。それでも、5日間で2kgほど痩せたのは、カロリーがコントロールされているからなのでしょう。日頃、いかにカロリー過多な食事をしているか、ということでもあります。それにしても、前回とは大違いの病院食に驚きました。そして、一つ大きな違いがあることに気がつきました。味噌汁の有無です。慈恵医大では、まったく味噌汁が出ませんでした。味噌汁の塩分を他の料理に回すことで、おいしくいただけたというわけです。すべての病院が見習うべき手法だと思いました。

単調になりがちな入院生活の中で、食事は唯一の楽しみとも言えます。とは言え、病院食は、すべての人に喜んでもらうことが目的ではありませんし、ミシュランの星をねらっているわけでもありません。あくまでも付帯的なサービスであり、あらかじめ決められたカロリー、バランス、塩分量などといった制約のなかで、メニューが考えられ、調理されています。制約が多い中で、単調にならないようにメニューを考えることは、なかなか大変なことだとは思います。慈恵医大の病院食で、もう一つ関心したことは、事前に1週間分の献立表が配られ、かつ、選択可能であったことです。例えば、朝食は、和食か洋食か選べました。その場ではなく、事前選択制にはなりますが、それでも良いサービスだと思いました。

一定の規模がなければ出来ない対応ではありますが、これまた他の病院に見習ってもらいたいと思います。30年前、かみさんが、NYで次女を出産した際の病院食は、メニューから選択する方式でした。さらには、退院前夜には、最上階にある特別室で院長夫妻とのディナーというオプションまでありました。もちろん選択はしませんでしたが、ここまでくると完全に商売ということになります。アメリカの医療費、および医療保険料が世界一高くなるわけです。一定以上の医療費は、すべて保険でカバーされる仕組みなので、患者は、より良いスタッフ・設備・付帯的サービスを備えた病院を求めることになります。病院サイドも、選択される病院を目指して、コストをかけます。これがアメリカの医療が世界一になった理由でもあります。

いうでもなく入院する目的は治療であって、食事ではありません。それは分かっていますが、病院食は、もう少し進化してもよいのではないかとも思います。塩分やカロリーを抑えながらうま味だけをアップするメニューの開発、食欲を削ぐプラスティックの食器の改善、あるいは冷凍やレトルト食品を活用してメニューの多様化を進めるなど、すぐにでも出来そうな気がします。恐らく、健康保険制度によるコストの制約が、大きな壁になっているのでしょうが、例えば、一部オプション化してもいいようにも思います。いずれにしても、関係者の皆さんには、もう一段のご努力をお願いしたいところです。(写真出典:ja.wikipedia.org)

マクア渓谷