日本では火葬ということなります。日本の火葬は、仏教の伝来とともに始まったようです。とは言え、火葬は、上流階級の文化であり、庶民は、土葬か野ざらしだったようです。火葬が一般化するのは、明治期以降ということになります。結果論かも知れませんが、火葬は、狭い日本の国土を考えれば、良い選択だったと思います。それでも、大都市圏では、墓地が不足気味です。土葬が基本のキリスト教ですが、広いアメリカで墓地不足という話は聞きません。ただ、欧州では、それなりに大変そうです。ローマ郊外で、巨大なマンション式墓地を見たことがあります。あれでは、死者も土に還ることはできません。
時と供に、死んだ者の数は積み上がっていきます。さらに核家族化によって、墓地は足りなっていくわけです。お参りしやすい場所にある墓地は随分高価なものになり、新しい墓地は遠方へと広がっています。都会には、狭小住宅並の墓地、あるいはマンション式の墓地も誕生しました。また、散骨、樹木葬など、新しい埋葬方法も増えつつあるようです。ただ、墓に関しては、無縁仏化という大問題もあります。身寄りのない人の無縁仏の増加も問題ですが、田舎にあった先祖代々の墓を守る人がいなくなるという無縁仏化が急速に進んでいるようです。都市への人口流入、地方の地盤沈下の結果ということになります。
都会に定着した地方出身者にとって、墓を引っ越しするという対応策もあります。しかし、決して簡単ではありません。平均すると、半年程度の日数に、墓地と墓石の費用とは別に300万程度の費用がかかると言われます。まずは、埋葬証明、改葬申請等の行政手続きが必要となり、しかも一体毎の申請となります。さらに改葬先で、同じような申請をし、許可を得る必要があります。次に、墓じまいを行います。法要を行い、遺骨を取り出し、墓石を撤去して、用地を更地にします。そして、遺骨を移動するわけですが、これがなかなかに大変です。一体、二体程度なら、骨壺に入れて、公共交通機関を使うことも、ゆうパックを利用する手もあります。先祖が多く眠る場合には、車での移送しかありません。
近年は、墓の引っ越しをパッケージ化して引き受ける業者も、ようやく登場したようです。20年ほど前、これは新しいビジネスになると思い、ヤマト運輸の役員に提案したことがあります。もちろん、社内でもそういった話があったようです。ただ、紛失等の事故が発生した場合、賠償額を定めることが難しいので、商売にはならないという結論だったようです。数年前から、ゆうパックでの取り扱いが始まりましたが、賠償については、骨壺等に対して行うだけで、遺骨に関しては賠償対象外としてあります。家族の気持ちは別として、なかなか現実的な対応だと思います。(写真出典:amazon.co.jp)