2021年8月27日金曜日

船酔い

高校生の頃、友人たちとキャンプに行くのが楽しみでした。何人かで、テントはじめキャンプ用品も共同購入し、よく出かけたものです。ある時、下北半島へキャンプに出かけ、帰りは脇野沢港から船で青森港へ戻ったことがあります。船は、20〜30トンくらいの小さな船でした。 その日は、海が荒れ、3時間近い船旅は、揺れっぱなしでした。友人たちも私も、すっかり船酔いしてしまいました。私は、 舷側に立ち、遠くの山を見続けながら、深呼吸を繰り返し、吐き気と戦いました。結果、 友人たちより、軽い症状で済みました。

後で知ったのですが、それは、船酔いへの対処法としては、結構正しいものだったようです。船酔いはじめ、各種乗り物酔いは、内耳、目、そして体全体から脳が受ける情報が多過ぎるか、矛盾しているために、平衡を保とうとする自律神経が混乱し、病的な反応を引き起こすものだそうです。ただ、そのメカニズムは、完全には解明されていないようです。船に関して言えば、揺れている以上、内耳と体をコントロールすることはできませんが、目にかんしては対応可能です。つまり、遠くの動かない一点を見つめることで、船酔いを招く要素を一つ減らせるわけです。もちろん、状況次第なので、万能の対策ではありません。

ホノルルで、 カタマラン・ヨットに乗って、イルカを見るというツアーに家族で参加したことがあります。乗客は20人がせいぜいという艇でした。さすがカタマランだけに、スピードは速いのですが、揺れ方も半端ないものでした。船酔いしてる乗客もいましたが、家族は、皆、大丈夫でした。帆船は、帆が一定方向からの風を受け続けるので、横揺れが少ないという特徴があります。しかも、双胴の上にシートを渡しただけのようなヨットですから、視界は開け、陸も、前方の波も見えています。船酔い対策には、やはり、目が大きな要素なのではないか、と思いました。

乗り物酔いは、紀元前から認識されていたようです。とは言え、産業革命以降、様々な乗り物が増え、かつスピードアップされたことで、広く知られるようになったのでしょう。昭和初期に、新聞社が読者から募った未来予測で「将来、酔い止めの薬が発明されるだろう」という予測が上位に入っていたという記事を読んだことがあります。記事は、これは実現した、と解説していましたが、実際には、必ずしも実現したとまでは言えないようです。発症のメカニズムが十分に解明されていなので、薬も、当然、諸症状を部分的に緩和するにとどまっているわけです。人によっては、あるいは状況によっては、十分な効果も得られるのでしょうが、限界はあります。

どうも乗り物酔いは、個人差があるように思えます。個性もあれば、慣れもあるのでしょう。 そうでなければ、漁師は仕事になりません。慣れ、あるいは訓練なのでしょう。乗り物酔いで、最も不思議だと思うことは、自動車で悪路をドライブ中でも、運転手だけは、 絶対に酔わないことです。これは個人差でも慣れの問題でもありません。恐らく、ドライバーだけが、 次に来る揺れを、予測できているからではないか、と思います。事前情報によって、 自律神経は身構えることが可能になり、情報の多さや矛盾を、ある程度回避できているのだと思います。船長や機長も同じではないかと思います。(写真出典:ja.wikipedia.org)

マクア渓谷