余った料理を持ち帰るという発想は、昔から世界中にあったのではないか、と想像します。日本でも、祝儀や不祝儀の宴席料理を折詰にして持ち帰ることは一般的でした。地方によっては、最初から持ち帰ることを前提とした宴会料理の出し方まであります。そういった際には、さすがに生ものや傷みやすいものは避けるのが常識となっています。調べてみると、実は、持ち帰りを禁止する法律は存在しません。ただ、食品衛生は、持ち帰った食品で食中毒が発生した場合でも、店側の責任が問われることがある、と解釈できます。要は、店が責任を持てない部分まで、店の責任とされかねないわけです。当然、店側の予防的措置として、持ち帰りは拒否されることになります。
2009年には、日本でもドギー・バッグを広めようという「ドギーバッグ普及委員会」が、容器メーカー、広告代理店、研究者等で結成されています。持ち帰り専用ボックス、自己責任カード等を作成し、配布しているようですし、農水省、環境庁、消費者庁とも連携しています。また、自治体でも、例えば大津市等は、独自の取組を続けているようです。ドギー・バッグ使用ガイドを作成し、「正しいドギーバッグ使用を推奨する運動」、略して「ドギーバッグ運動」を展開しています。フード・ロスは、人類共通の課題です。SDG’sに対応した自治体レベルでの取り組みは、賞賛に値します。ただ、残念ながら、いずれも浸透しているわけではないようです。
浸透しない理由は明確です。単なる呼びかけや運動だけでは、店側のリスクは残ったままだからです。アメリカも日本も、食品衛生法に大きな違いはないと思います。アメリカのドギー・バッグも、法律上、明文化されているわけではないでしょう。しかし、自己責任という思想が浸透しているアメリカでは、成り立つわけです。それが曖昧な日本でドギー・バッグを普及させるためには、何らかの法的対応が必要だと思います。保健所を所轄する厚生労働省としても、法令が無ければ、動きにくいことはよく分かります。食中毒が出れば、責められるのは厚労省ですから。保健所が動かない限り、飲食店はリスクを取るわけにはいきません。
持ち帰った食品で起こった食中毒に関しては、その都度、原因が、店側にあるか、客側にあるか、徹底調査すればいいわけですが、結構、手間もかかり、判断も難しいと思います。とすれば、店の外に出た食品に関しては、原則として客の自己責任だとする法令を整備するしかありません。英国やフランスでも、ドギー・バッグ普及に向けた行政の取り組みが始まっているようです。ことにフランスでは、ドギー・バッグ推進に向けた法制化も検討されているようです。(写真:ドギーバッグ普及委員会配布シール 出典:doggybag-japan.com)