2021年4月8日木曜日

あおり運転

あおり運転はじめ、道路上でのトラブルは、昔から、国を問わず、頻発してきました。キレやすい人、つまりアンガー・マネジメントができない人がいる以上、この先も絶えることはないでしょう。 あおり運転を行った理由は「進行の邪魔をされた」、「割り込まれた」、「追い抜かれた」が多いようです。あおり運転と言えば、思い出すのはスティーヴン・スピルバーグの出世作「激突!」(1971)です。映画も、主人公がタンクローリーを追い越したことから、恐怖が始まりました。あおり運転は、概ね、ドライバーの身勝手な思い込みによるものであり、些細なことが些細に思えない心理状況の反映でもあります。

ある調査によれば、ドライバーの7割が、あおり運転をされた経験があり、うち8割が、後ろから接近されたり、幅寄せされたケースだったようです。自分の経験からしても、高速道路の追越車線で、高速で接近した車がピタリと後ろに付き、車線変更を迫る、いわゆる「あおり」は、よく見かける行為です。とは言え、あおられてスピードを上げた結果、速度違反で捕まっても、危険回避には相当しないようです。幅寄せになると、これはかなりの悪意をもって行われる危険な行為であり、犯罪そのものだと思えます。さすがに、私も経験がありません。また、あおられる車の多くは、軽自動車だとも聞きます。分かる気がします。

あおり運転は、2020年、道路交通法が改正され、危険な方法で、故意に妨害運転を行った場合、処罰の対象となることになりました。従前は、危険運転によって事故が起きた場合、あるいは車間距離不保持のみが処罰対象でした。改正のきっかけになったのは、2017年に東名高速で起きた死亡事故です。執拗なあおり運転を繰り返していた犯人は、被害者の車の前で停車、そこへ後続のトラックが追突し、運転していた夫婦は死亡、子供2人は重症を負います。この事件を契機に、多くの異常なあおり運転が、TVで報道されます。背景として、ドライブ・レコーダーの普及によって、あおり運転が映像に記録されるようになったことが挙げられます。また、それによってドライブ・レコーダーは、爆発的に売れました。

あおり運転については、日本独特の車文化も関係しているように思います。パッシング・ライトとクラクションを使わないことです。かつてパッシング・ライトは、しばしば見かけましたが、近年、受けたことも、やったこともありません。理由は分かりません。クラクションは、日本の道路交通法上、例外を除いて、原則、鳴らしてはいけないことになっています。日本以外では、やたらクラクションが鳴っています。発展途上国では、エンジンが回っている間中、クラクションが鳴らされています。これはこれで問題ですが、クラクションは、ある意味、車によるコミュニケーション手段という面があります。うるさくなるのは困りものですが、クラクションを鳴らすことによって、多少は苛立ちが解放される可能性があります。また、先行する車が、早めに道を譲り、後続車のいらだちを減らす効果も期待できます。ある程度ではありますが、クラクションの解禁による効果も望めるのではないでしょうか。

昔から、車に乗ると人が変わる、と言われる人がいます。変わるのではなく、元々の人格の一部が増幅されるということだと思います。危険な運転も、身勝手な運転もなくなることはないでしょう。将来、自動運転や半自動運転が普及すれば、高齢者の運転ミスやドライバーの過労による事故も含め、ヒューマン・ファクターによる事件や事故は、かなり解消されます。ただ、もう少し時間がかかります。それまでの間、あおり運転対策としては、法的な面や技術的な面からの取組も大事ですが、もう少しドライバーの心理的な面からのアプローチもあって然るべきだと思います。(写真出典:smartdrive.fleet.jp)

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