2021年3月5日金曜日

道の駅

大崎市の人気の道の駅
国土交通省が管轄する「道の駅」は、現在、全国各地に1,180ヵ所あります。複数の省庁、自治体、そして民間が提携するプロジェクトとしては、稀に見る大成功だったと思います。いまや、どこの道の駅も大盛況。観光客だけでなく地元の人たちにも大人気です。元々は、高速道路にサービス・エリアやパーキング・エリアがあるように、一般道にも24時間使える施設を作ろうと言う地方からの発想だったようです。ドライブインはあったのですが、24時間営業は少なく、かつ利用できるのは食事をする客に限定されます。最初の道の駅は、旧建設省が実験的に新潟県豊栄に開設した情報ターミナルだとされます。本格的議論は、90年に広島市で行われた「中国・地域づくり交流会」に始まります。官民プロジェクトとして、91年には、12ヵ所で社会実験が開始され、93年、制度化されました。

道の駅とドライブインとでは、その性格が全く異なります。ドライブインは、アメリカで、モータリゼーションの訪れとともに、ロードサイド・ダイナーとして普及しました。基本的には、車から降りることなく注文し、食事できるスタイルであり、後にドライブイン・シアターやドライブ・スルーにつながりました。日本では、トラックによる輸送が本格化した60年代、トラック運転手をターゲットとした食堂として各地に作られました。昔は、そこいら中にあったものですが、高速道路の普及によってトラック運転手の利用が減り、いまや絶滅に近い状態だと思います。都市部の郊外型店舗の拡大も、ドライブインの衰退に影響したようにも思います。いずれにしても、ドライブインは、休憩でき場所でもありましたが、あくまでも食堂でした。

道の駅のねらいは、休息機能、地域の連携機能、情報発信機能と定義されています。トイレや情報発信コーナーもありますが、物販と飲食コーナーがメインとなり、人気を博しています。特に物販では、名産品に加え、近郊の農家や漁師が持ち込む新鮮な食材が地元の人たちにも大人気です。ここが、高速のSAやPAとの大きな違いなのでしょう。地方都市の中心街は、車社会化と共に、シャッター通りとなり、駐車場の広い郊外店舗が増えました。郊外店舗の多くはチェーン展開している店であり、その画一性ゆえ、町が持っていたマルシェ的魅力は持ち得ません。道の駅の野菜は、生産者が、直接持ち込み、値付けしています。高いか安いかは別として、とても納得感が高いように思います。JAが、一括買い上げ、均一の値付けをして陳列すれば、スーパーと変わりません。失われた町の魅力を、道の駅が回復しているのかもしれません。

高度成長期の産業転換によって加速した労働力の移動は、東京一極集中、地方の衰退を生み、70年代から政治課題であり続けました。88年には、ふるさと創生事業が開始され、あろうことか、全国の市町村に、使途自由の1億円が配布されました。有効な使い方も多かったのでしょうが、純金のこけし、あるいは今は廃墟となった意味不明な箱物など、無駄遣いとしか思えないものも多くありました。道の駅が成功したのは、施設をプラットフォーム化し、運営を民間に委ねたからです。最近は、温泉施設、遊園地、宿泊施設等々、様々な施設が道の駅に追加され、総合レジャー施設化が進む傾向もあります。それはそれで結構なのですが、観光一辺倒ではなく、地域にとっての道の駅の魅力を考えるべきと思います。過剰投資がふるさと創生事業の二の舞にならなければいいのですが。

近年は、道の駅の防災拠点化が進められているようです。実際的で、意味のある対策だと思います。建屋の耐震化や無停電化に始まり、貯水タンク、蓄電器、防災倉庫等々が整備されつつあり、広域防災拠点化を図っているようです。新たな町の賑わいを創造した道の駅が、さらに地方の拠点化することは望ましい方向だと思います。(写真出典:mo-kankoukousya.or.jp)

マクア渓谷