2021年1月7日木曜日

百年企業

NYタイムスが、コロナ下における企業経営のあり方を探るべく、京都の「一文字屋和輔(一和)」を取材した記事を読みました。今宮神社門前の一文字屋和輔は、西暦1000年創業、あぶり餅のみを商います。コロナ禍で客足は減ったものの、一和は財政状況を心配していない。なぜなら、その経営は、短期的な利益と成長よりも、伝統と安定を優先しているからだ。長期的視点に立つからこそ、幾たびの戦火や災害を乗り越えてきたのだ、と伝えます。アメリカ的な、株主利益優先の近視眼的経営では、コロナ禍を乗り越えられない、と警鐘を鳴らしています。

100年経営研究機構によれば、創業100年以上の日本企業は、3万3千社以上。それは、世界の百年企業の4割を占めるそうです。うち、200年以上が3,100社以上、500年以上が約140社、そして西暦1000年以前に創業した企業は19社ある、と記事は伝えます。よく言われる日本の千年企業は9社です。19社は間違いだと思います。世界最古の企業として有名なのが大阪の宮大工、金剛組です。578年、聖徳太子の四天王寺建立に際して招集を受けた宮大工が創業しています。

日本に百年企業が多い理由は、長期的視点に立った経営ばかりでもありません。近世で言えば、江戸幕府の鎖国政策、そして植民地化されなかったことも含め、明治期の急速な近代化が外国の干渉を排除してきたことが大きな理由だと思われます。第二次大戦では、沖縄が戦場となり、原爆、空襲で主要都市は焼け野原となり、独立も失います。ただ、戦後の外国による干渉は、あくまでも占領統治であって、植民地支配ではありませんでした。大雑把に言えば、極東の島国であったことが幸いしていると言えそうです。

百年企業の内訳を見ると、地域別には、東京都が最も多く、ついで大阪府、愛知県と続きます。全企業に占める百年企業の割合で見ると、京都府、山形県、新潟県という順番になり、興味深いところです。業種で言えば、最も多いのが貸事務所。これは老舗が家業をたたみ、資産を活用して不動産業を行っているケースが多いということなのでしょう。次いで、清酒製造、旅館と続きます。いずれも時代の変化による影響が少ない商売とも言えますが、資本力が無ければできない商売でもあり、それが時代の荒波を乗り越える元にもなっていたと想像できます。

2019年、新たに百年企業になった会社は、1600社を超えると聞きました。日本に百年企業が多い理由として、地政学的理由をあげましたが、明治期以降の企業に関して言えば、日本的社会主義の賜物とも言えそうです。富国強兵策、国家総動員体制、戦後の経済復興計画、それらは日本の優秀な官僚による管理のもと、進められました。いわゆる日本株式会社です。企業は、役所の業者として、管理されるとともに手厚い保護も受けてきた面があります。国際化とともに、企業を取り巻く法的環境は、欧米化が進んできました。株主利益の重視等も典型です。今後も、日本が、百年企業の多さを誇れるかどうかは、微妙だとも言えそうです。(一文字屋和輔 写真出典:smartmagazine.jp)

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