昔々、皆、方針の徹底不足に悩んだとさ。
米国のビジネス・コンサルタントのラム・チャランが、世界の名だたる企業2,500社以上の経営計画を調査しました。結果、失敗した計画の7割以上が、計画そのものではなく、実行段階に問題があったそうです。営業の世界でも、新しい方針や戦術がうまくいった例は、ごくわずか。それもそのはず、新しいプランが徹底できないうちに、結果がおもわしくないと判断され、次のプランが計画されるということの繰り返しでした。問題は、プランの良し悪しではなく、実は徹底力にあったのです。組織とは、煎じ詰めれば、「目標共有と役割分担」ということになります。目標共有に関して言えば、個人目標と組織目標が完全に一致していれば、強い組織になります。まず個人目標があり、それを効率よく達成するために組織化したような、いわば原始的な組織は、これが出来ています。例えば、氷河期にマンモスを狩る時などがいい例でしょう。ところが社会が複雑化すると簡単にはいきません。例えば、株式会社の目的は株主のために利益をあげることです。従業員は、生活のために賃金を得ることが働く目的です。従業員は、より多くの賃金を望みます。利益が同じなら、人件費増は株主にとってマイナスとなります。
そこで組織の背骨とも言える「目標と評価」という仕組みが求められます。組織目標を分解して個人目標を設定し、その達成度を評価して処遇に反映させます。これが人事制度の主な機能です。個人目標には、各人の理解・納得が求められます。ここが一番難しいところであり、完璧ということはほぼありません。私は、まず組織目標をいかに達成するかというミーティングをさせます。組織目標を理解させ、その達成のために個人がすべきことを考えさせ、チームのためにという意識を自発的にセットさせるためです。これを行えば、個人目標の納得感は高まります。
組織の徹底不足は、しばしばPDCAがうまく回っていないことにも原因があります。営業組織でよく見かけるのは、結果の数字ばかり見て、責任を追及するスタイルです。Check段階で、最も重要なことは、責任追及ではなく、Whyを繰り返すことです。それがなければ、PDCAとは言えません。そもそもPDCAサイクルは生産現場で生まれたもので、営業組織には向いていない面があります。むしろCheckから回す方が適しています。近年では、アメリカ空軍が開発したOODAループが、営業組織には適しているとも言われます。OODAとは、Observe(観察)・Orient(適応:生データを情報に転換)・Decide(決定)・Action(実行)、その繰り返しと言う意味でループがつきます。
ちなみに、ラム・チャランは、その著書で、組織の徹底力に関して、リーダーシップのあり方が重要だとしています。それもその通りだと思います。(ラム・チャラン 写真出典:corporatebytes.in)