2020年9月26日土曜日

ハミウリ

シルクロードを巡るツアーに参加したことがある父が、トルファンで食べたハミウリが美味しくて、また食べたいとよく言っていました。要はメロンでしょ、と言うと、もっと水分が多く甘いと言うのです。恐らくメロンとさほど変わらないと思うのですが、高温低湿地で食べれば、天国の味だったと思います。よろず食物や飲物は、それが育った土地で味わうのがベストだと思います。

中国共産党のチベットや新疆ウイグル自治区に対する対応は、国境地帯における戦略的深度の確保が狙いではありますが、組織の中央集権指向の問題という面もあります。組織は、本来的に中央集権を求めるものです。より効率的だからです。ただ、組織規模が拡大すると機能不全を起こしたり、権力の集中が腐敗を生んだり、中央集権そのものが組織目的化する、つまり保身に走ったりします。すると暴動、革命等、反政府勢力の台頭等が起こり、分権化します。ただ、新しく生まれた政権も再び集権化を目指し、集権と分権は循環していきます。

広大な多民族国家である中国は、歴史的に見れば、強力な中央集権なくして成立しません。改革開放政策が始まった時、国内外では、中国は民主化するという期待が広がりました。ただ、六四天安門事件で、それは打ち砕かれ、中国共産党の固い意志が示されました。以来、中国共産党は、法輪功事件等、反政権とは言えない団体にも強権を発動してきました。その永い歴史から、”蟻の一穴”を、先んじて塞ぎ続けることの重要性を心得ているからです。つまり、保身の段階に入っていると言えます。

中国政府は、新疆ウイグル自治区でテロ対策に取り組んでいると主張しています。確かに分離独立を求めるテロはありました。テロ対策とは、実に都合の良い大義です。380ヵ所を超える"職業技能教育訓練センター"に100万人以上が拘束されていると言います。ウイグル族の実に8人に1人が収容されていることになります。町では伝統音楽や女性のヒジャブが禁止されるなど、まさに民族浄化の様相を呈しています。国際的批判はあるものの、実態が分からないこと、また中国の経済的影響力もあり、その有効性は認められません。

チベットでも、ウイグルで”成功”した洗脳キャンプが急速に増えているという報道もあります。民族浄化は、中央集権の必然なのでしょうか。「勝って譲る」という古代ローマの寛容性が世界帝国を作ったとも言われます。ムニキピウムと呼ばれる被支配地の自治体にも、それが現れています。一定の制約の下、被支配地域は、その文化と政治を存続できました。文明の傘で文化を覆う統治です。古代ローマ没落の一つの理由は、キリスト教を国教化したことだ、と塩野七生は言います。繁栄の礎でもあった多様性を否定したからです。(写真出典:smile-chinese.sakura.ne.jp)

マクア渓谷