防御戦には、大雑把に言って二通りの戦術があります。水際防御と縦深防御です。水際作戦は、例えば国境線に兵力を集中させ、敵を一歩も国内に入れない作戦です。破られたら終わりというリスクがあります。一方の縦深防御は、国境から何重かの防衛線を敷き、敵の浸透は許すものの、消耗させ、兵站を断ち、弱体化したところを叩くという戦術です。いずれも一長一短あり、状況や地形等によって選択されます。毛沢東思想の一部を成す人民戦争理論は、敵を懐深く誘い込み、包囲殲滅することが基本です。中国の広大な国土、人民解放軍とともに戦う膨大な人民を前提としていますが、朝鮮半島でも確実な成果をあげたわけです。
縦深防御は、英語でDefence in depthと言われるとおり、深さを確保できるほど、成功確率は高まり、損害も少なくできます。戦略的深度を確保するために、国境を拡大するという選択肢もありますが、国境の外から防衛線を敷設できれば、なお良しということなります。旧ソビエトの東欧諸国やイスラエルのヨルダン川西岸等も、それに当たると思います。中国も、国境を巡る争いに、武力を投入することに躊躇はありません。例え、相手が同盟国であっても幾度か戦火を交えてきています。
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ガルワン渓谷 |
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