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若き天才スパイク・リーも立派に老人となったものの、感覚の鋭さは衰え知らず。「ブラック・クランズマン」も上出来でしたが、本作は、もっとノビノビと映画を作っている印象があり、若いころの作品を彷彿とさせます。人種差別への強烈なプロテストもいつもながらですが、これまで彼が言ってきたことのすべてを注ぎ込んだような印象です。音楽もいつも通りのこだわり満載ですが、マーヴィン・ゲイの”ワッツ・ゴーイン・オン”がいいモティーフになっています。役者たちもいい演技をしています。特にスパイク・リー作品常連のデルロイ・リンドーは、持てるものをすべて出し切ったくらいの演技です。
ミネアポリスでの白人警官によるジョージ・フロイド殺害事件は、決して珍しい事件ではないのでしょう。ただ、その犯行のすべてが動画で拡散し、コロナウィルス感染防止の自粛と失業で荒んだ人々の感情に火を付けたように思われます。そして、国内の分断が自らの選挙に有利に働くことを知っているトランプは、いつもどおりあおります。しかし、これほど大きなデモとなり、明確な要求がないままでは、終わりが見えません。
人種差別を含め、およそ差別というものは、為政者の都合で生み出されたものが多いと考えます。人種差別に限ってみれば、古代ギリシャやローマには見られない差別です。もちろん、民族対立や宗教差別、そして奴隷とという仕組みもあります。ただ、肌の色といった外形による差別はありません。産業革命後の植民地政策全般において、現地人迫害、奴隷化の正当性を強弁するために作られたものだと思われます。人が作ったものであれば、人が壊すことも可能なはずです。ただ、あまりにも深く根を張ってしまったため、黒人大統領が2期務めた後ですら、除去するためにはまだ時間が必要なのでしょう。
出典:theriver.jp