2020年5月7日木曜日

営業昔話(6)夢のサイクル

昔々、皆でPDCAを回したとさ。

夢のない人には目標がない
目標のない人には計画がない
計画のない人には行動がない
行動のない人には成果がない
成果のない人には反省がない
反省のない人には進歩がない
進歩のない人には夢がない

「夢のサイクル」と呼ばれる一文です。うまいことPDCAサイクルを表しているので、会社でよく使いました。出所が判然とせず、伝聞で広がったので、様々なパターンがあります。最近では、流通評論家の吉田貞雄という方の「夢八訓」と紹介されているようですが、15年ほど前、必死に原典を探した時には、まったく出ていなかった名前です。この方も、自分なりにアレンジして発表したのでしょう。ちなみに、15年前に調べた時は、出所をつきとめることはできませんでした。ただ、最も信憑性が高いと思えたのが、函館のさる飲食店のトイレの落書きから始まった、というものでした。

意外とそんなものかもしれません。仕事から生まれた知恵が、結果的にPDCAサイクルにつながっていたということなのでしょう。PDCAサイクルの歴史は古く、デミング博士が日本に持ち込んだもののようです。日本のお家芸である品質管理(QC)は、国勢調査に協力するために来日中だったデミング博士の講演から始まります。1950年のことです。デミング博士の統計的プロセス制御の理論を、QCサークル(小集団活動)を通じて実践した日本は、見事に経済復興を成し遂げ、かつ高い品質を誇るものづくり大国となりました。その後、QC活動は、生産現場から、管理部門へ、営業部門へと広がり、普遍的なマネジメント・ツールになります。まさにデミング博士が、日本の産業界を形作ったとも言えます。

日本の産業界に、すっかり定着したPDCAですが、時代の変化とともに問題も出てきました。例えば、スピード感に欠ける、Pのウェイトが高すぎて、時間がかかる、あるいは前例踏襲が増える、等々があげられます。それらの改良した、CAPDOs、OODAループ等も登場しています。また、QCサークルも少なくなりました。さらに品質至上主義は「いいものを作れば売れる」という神話まで生みます。マーケティング的に言えば、多少異論もあるのですが。
デミング博士  写真出典:日科技連


マクア渓谷