真っ赤なウソです。ただ、なるほどと思ってしまいました。実に見事な話術。あっという間に話に引き込まれます。さすが大物政治家は違うものだと思いました。中越の老人たちは、角さんのことをアニヤンと呼びます。皆、判で押したように「アニヤンは、人の話をよく聞いてくれた。」と言うのです。そんなわけありません。若くして大臣になり、派閥を率いた角さんは、多忙を極め、農民の話など、聞いている暇はなかったはずです。
おそらく、よく聞いてもらった、と思わせる術に長けていたのだと思います。心ここにあらずで、聞いてるふりだけの人は、すぐに分かりますし、感じの悪いものです。角さんは、人に会う時、例え短時間であっても、しっかり相手に正対し、しっかり目を見ていたのでしょう。本当は、話なんか聞いていないのかもしれませんが、相対する姿勢が大きな違いを生んだのだと思います。田中角栄は、演説の名人以上に、聞くことの達人だったと言えます。それが政治の本質であり、歴史的得票数に結実したのでしょう。

ところで、私は、田中角栄記念館でビデオを見た後、館内のギフトショップでまたたびの漬物を買ってしまいました。おいしくもなく、体に力がみなぎることもありませんでした。実に貧しい食べ物だなと思いました。
田中角栄 右後ろは秘書早坂茂三 出典:toyokeizainet