昔、韓国の親密会社が、ソウルの高級料亭で接待してくれるというので、コンベエやバクダン酒の嵐を回避しようと、私はマッコリが大好きだと事前に伝えてもらいました。これが、先方を結構困らせた、という話を後に聞きました。マッコリは大衆酒、場合によってはミネラル・ウォーターよりも安いのです。高級料亭には置いていません。また、遠来の客に失礼がないほど高価なマッコリも存在しません。迷惑をかけてしまいました。
朝鮮戦争のおり、金日成が、秘密裏に38度線を越えます。まっすぐ向かった先が京畿道高陽だったと言われます。そこは有名なぺダリ・マッコリの生産地。金日成は、これが飲みたくて戦争を始めたのではないか、という話まであります。このぺダリ・マッコリは、のちに「大統領のマッコリ」と呼ばれるようになります。朴正熙大統領のお気に入りだったからです。以来、青瓦台に納められる唯一のマッコリだとも聞きました。

1999年、現代グループ総帥が、平城に金正日を訪問した際、金正日は、手土産に、このマッコリを所望します。親から、うまいと聞かされていたのでしょうね。金正日なら、いくらでも密輸できそうなものですが、生マッコリは鮮度が命。複雑なルートでは、難しかったのでしょうね。翌2000年、金大中が平城に歴史的訪問を果たします。空港に出迎えた金正日と抱擁しながら、言葉を交わします。読唇術者によれば、この時、金正日は「あれは持ってきたのか?」と言っているそうです。ぺダリ・マッコリのことに違いない、と韓国の人々は思っているそうです。
数年前、親密会社の皆さんとへイリ芸術村で昼食をした際、またマッコリで迷惑をかけてしまいました。わざわざ早起きして、高陽まで行って、ぺダリ・マッコリを買い、持ち込んでくれたのです。上品な甘さと酸味、比較的スッキリとした飲み口。正直、美味しかったです。金王朝三代目もお好きでしょうかね?
ぺダリ・マッコリ 出展:丹醸&スペペ