そして、それぞれの画材を前提に、技と表現を進化させた結果、様々な違いを生んできたのだと思います。上村松園が油で描いた「序の舞」など見たいと思いません。あの凛とした気品は、岩絵具とニカワでしか出せないと思います。同様に、レンブラントが岩絵具で「夜警」を描けるわけもありません。とは言え、日本画と西洋画の違いは、画材に起因するものばかりとも言えません。西洋画の写実に対し日本画の象徴という点も、その一つ。明確な相違ではなく、傾向という程度ですが、その背景には、宗教があると思います。仏教もキリスト教も偶像崇拝禁止。キリスト教の神は擬人化されていますが、像も絵もありません。ただ、キリストは人間なので、より写実的である方が伝えやすいと言えます。一方、釈迦は「法(真理)に依りて人に依らざれ」と遺言します。釈迦の死から500年後、ギリシャの影響を受けたガンダーラで初めて仏像が作られます。仏教の宗教化が進んだ現れでもありますが、仏教が求めるものが「真理」であること、そして「人に依らざれ」の教えが、仏像を象徴的なものにしていったと思われます。