日本三大うどんと言えば、秋田の稲庭、香川の讃岐までは確定。あと一つは、水沢、氷見、五島が有力候補とされます。名古屋のきしめんという声もありますが、これは名古屋人が辞退。なぜなら、きしめんはきしめんであって、うどんではないから。油を使わずに練り上げる稲庭の細麺は、かつて一子相伝の技で佐竹の殿様専用でした。讃岐は、いたって庶民派ですが、多くの塩と足踏みで出すコシの強さが売り。幾度かあった讃岐うどんブームで、うどんはコシが強くなくちゃ、という風潮が広まったように思います。
うどん文化圏の中心である大阪や京都、うどん伝来の地である博多でも、麺は、出汁が絡みやすい柔らかめ。むしろ讃岐の方が例外的。ちなみに、香川県では、日本にうどんを伝えたのは弘法大師空海だとされています。讃岐の人は、何でも弘法大師を持ち出す傾向があります。ところで、柔らかいうどんの最高峰は、なんと言っても伊勢うどん。初めて食べた時には、病人食としか思えませんでした。江戸期、お伊勢参りがブームになると、長旅で疲れた体にやさしいということで定番化したとも言います。本音は、一日中煮ておいて、客が来たらすぐに出せるという利点にあったのでしょう。

御師が広めたという「一生に一度はお伊勢参り」は、広告コピーとしてオール・タイム・ベスト。お伊勢さんの神々しさは格別なので、一度どころか何度でもお参りしたくなります。日本の多くの神社が朱塗りなのに対して、最高峰に位置するお伊勢さんは白木。格式の高さを感じます。日本で最も成功したショッピング・モールおかげ横丁で、伊勢うどんを食べれば、その真っ白な麺すら神々しく思われてきます。
出典:hitosara.com