2026年8月4日火曜日

冷やし中華

冷やし中華は好きなのですが、現役の頃、ワン・シーズンに食べる機会は1~2回程度でした。というのも、サラリーマンのランチとしては、中途半端だからです。ラーメンよりカロリーは低めで、しかもラーメンのように定番のライス、チャーハン、餃子といったお共がありません。大盛りにしても、満足感は薄めだと思います。ただ、もう働いていないこと、猛暑が続くこと、何より年老いたこともあり、ここ2~3年は、昼食に自分で作って食べるようになりました。冷やし中華は、色んな具材が乗っているから美味しいという人がいます。馬鹿なことを言っちゃいけません。冷やし中華は、麺とタレが勝負です。具材なんか箸休め程度だと思います。私は、ゴルフ場の昼食で冷やし中華を注文するとき、具材は別盛りにしてもらっています。

と言いながらも、具材も楽しめ、ボリュームもランチとしては十分な冷やし中華もあります。神保町の揚子江菜館の涼拌麺 です。具材は、なんと10種類にのぼり、もはや立派な料理です。揚子江菜館は、冷やし中華発祥の店とされています。2代目オーナーが、1933年、ざるそばを参考に開発したとされます。一方、仙台の龍亭が1937年に発売した涼拌麺を嚆矢とする説もあります。ただ、いずれも涼拌麺と称していることからしても、中国が発祥と考えていいのでしょう。中華圏の涼拌麺は、常温に戻した麺に、胡麻ベースの芝麻醤や落花生ベースの花生醤を掛けて食べるようです。ということは、冷やし中華はゴマだれがルーツということになりそうですが、上海など南方では酢も使っていたようです。揚子江菜館も龍亭も当初は醤油だれだったと聞きます。

ただ、日本の冷やし中華は、涼拌麺とは異なる進化を遂げた日本独自の中華料理ではあることは間違いないようです。その証拠として、中華圏では、冷やし中華を”日式涼麺”、あるいは”日式冷中華麺”と呼ぶようです。ちなみに、関西では冷やし中華を冷麺と呼びます。韓国料理の冷麺も同じ呼び方ですから、ややこしいところがあります。京都の老舗中華料理店である中華のサカイが、1939年にゴマだれをかけた冷やし中華を冷麺として発売します。これが人気を博したことから冷麺という呼称が広まったとされます。さて、冷やし中華と言えば、醤油だれか、ゴマだれか、という議論もあります。好きずきですが、私は醤油だれ専門です。ゴマだれも美味しいと思いますが、さっぱりさが身上の冷やし中華ではなく、別な濃厚系中華料理になってしまいます。

冷やし中華ファンは、麺にこだわる人が多いように思います。冷やし中華で使う中華麺は、普通のラーメンで使うものよりも卵の割合を増やしたものになっています。いわゆる卵麺ですが、コシが強く伸びにくいという特徴があります。さらに茹でた麺を氷水でしっかり冷やすことで、弾力、ツルッとした食感も生まれます。冷やし中華の人気店では、タレもさることながら、麺がまったく異なります。その食感を家で再現することは難しいと思います。近所のスーパーで卵麺にお目に掛ることはほぼありませんが、中華街やネットで生麺を入手できれば、再現性が高くなります。もちろん、卵麺は、ラーメンの麺としても使います。香港の細い乾麺”全蛋麺”も卵麺として有名です。これはこれで美味しいのですが、冷やし中華には向きません。

冷やし中華ファンの間では、麺、タレ、具材に関するこだわりの議論が多いものですが、1985年、それらがぶっ飛ぶような出来事が札幌で起こります。札幌グランドホテルが、ビアホールのメニューとしてラーメンサラダを発売したのです。野菜の多い冷やし中華という見方も出来ますが、中華だれがドレッシングに進化したことで、日本式中華料理という枠組みを超え、ある意味、ユニバーサルな料理になったわけです。私は、市販の冷やし中華だれをベースに、レモン、ポン酢、ナンプラー、ガラムマサラ等を加えて楽しんでいます。冷やし中華の具材の基本は、キュウリ、叉焼(ないしはハム)、錦糸玉子だと思いますが、サラダだと思えば何でもありです。ただ、ラーメンサラダが、いまだ北海道名物に留まっていることは、やや意外だと思っています。(写真出典:sirogohan.com)

京の喫茶店