10年ほど前、飯田橋に「贊記茶餐廳」がオープンしました。茶餐廳は、読んで字のごとく、お茶と軽食の店であり、香港ではごく一般的に存在するスタイルのようです。贊記茶餐廳は、明らかに香港の人たちのためにオープンした店だと思われ、メニューも香港スタイルがそのまま持ち込まれています。 飲茶、麺類、ご飯もの、菓子もあり、香港でのランチの雰囲気が味わえます。特に菠蘿包(ポーローパオ)という菓子パンが人気で、それにバターをはさんだものが定番になっています。この店のメニューにもありますが、香港のランチの定番に焼味飯(シャオウェイファン)があります。叉焼やロースト・ダックなどをご飯と一緒に食べるというシンプルな代物です。もともとは広東発祥らしいのですが、最も香港らしいランチのように思えます。
例えば、横浜中華街を歩けば、店先のガラス越しに叉焼はじめ様々な肉が吊るされているのが見えます。実に中華街らしい光景だと思います。それを骨ごとぶつ切りにしてご飯に乗せたものが焼味飯です。厳密に言えば、ロースト・ダックのように単純なあぶり焼きを焼味と呼び、タレや蜜を塗りながら焼いた叉焼などは焼臘(シャオラー)と呼ばれます。ただ、通常、あまり厳密な区分はされず、香港では概ね全てが焼臘とされているようです。日本で、チャーシューと言えば、ラーメンの具材として一般的です。ラーメン屋の叉焼は、豚肉を煮込んだ、いわゆる煮豚がほとんどです。なかには醤油などに漬け込んだ豚肉をオーブンで焼いた焼豚を使う店もあります。とにかく、日本では煮豚も焼豚もチャーシューと呼ぶわけですが、中華料理の叉焼とは大いに異なります。
焼臘としての叉焼は、甘辛いタレに漬け込んだ豚肉を窯に吊して蒸し焼きにしたものです。甘く深い味わいと表面近くの赤みが特徴です。近年、中国の都市部でも日式拉麺店が増えているようですが、煮豚は日式叉焼と呼ばれているようです。煮豚は、日本で生まれた別ものということなのでしょうが、間違いなく中国料理が起源だと思います。中華料理には、豚肉を煮る東坡肉(トンポーロウ)や醤肉(ジャンロウ)があり、それが日本で、角煮やラーメン屋のチャーシューになったものと思われます。ラーメン屋の煮豚の歴史は判然としませんが、専用の窯がいらない、日持ちが良い、バラ肉は安い、煮汁も活用できるといったメリットがあり、ラーメン屋で広まったようです。ラーメンの世界では、スープや麺と並ぶ主役格と言っていいのでしょう。
最近、浅草橋にある香港料理店の焼味飯にハマっています。この店も、香港人相手の店のようで、日本人客はごくわずかです。提供されている焼味は、広東式叉焼、焼肉(豚肉)、焼鴨、醤油地鶏、蒸し鶏です。ランチには、2種類の肉を選んで乗せるセットがあります。一番人気は、皮付きの状態でじっくりローストした焼肉(豚肉)のようです。しっとりとして実に美味しいのですが、問題は皮です。例えば、北京ダックのようなパリパリとした食感ではなく、バリンバリンの固さです。とても歯がたちません。それが本場香港の焼味ということなのでしょうが、私は皮だけ残してしまいます。ちなみに、その店の名物の一つは、河粉(ホーファン)です。香港名物の幅広な米粉麺です。ヴェトナムのフォーの語源とされています。(写真出典:hongkongnavi.com)
