2024年12月25日水曜日

ローストビーフ

箱根が好きで、年に2回くらいは貸別荘を借りて出かけています。箱根は、富士山を初めとする景観の美しさ、体が温まる温泉、別荘地ならではの美術館や美味いものとお楽しみが満載です。東名高速を使って車で行くと、御殿場から入ることになります。JAのファーマーズ御殿場の農産品、御殿場ハムの焼豚、鈴廣の御殿場店などで買い物して、貸別荘へ向かいます。帰りにはアウトレットにも寄ります。ここのところ、小涌谷周辺の貸別荘を借りることが多く、宮ノ下の富士屋ホテルのピコットに寄って美味しいパンも調達します。しかし、箱根での最大級のお楽しみの一つは、仙石原の相原精肉店のロースト・ビーフということになります。

とりわけ、国産牛を使った”紋次郎”は最強のロースト・ビーフだと思っています。なぜ相原精肉店のロースト・ビーフが美味しいのかはよく分かりません。最上級の肉を使っているのでしょうが、それであれば他の高級ロースト・ビーフでも同じはずです。ところが、明らかに他とは異なる美味しさがあります。塩やにんにくの揉み込みがいい塩梅なのか、火の入れ方が絶妙なのか、あるいは熟成に何か秘訣があるのか、よく分かりません。今年の春、改装してこざっぱりとした店になりましたが、以前は下世話な町の精肉店そのものでした。相原精肉店のロースト・ビーフは、仙石原の別荘文化が生み出した傑作ということなのでしょう。

英国生まれのロースト・ビーフは、不味いと言われがちな英国料理のなかで、ほぼ唯一輝いている名品と言えます。英国では、サンデーローストと呼ばれ、日曜日の午後に食べる習慣があるようです。塩・胡椒をすり込み表面を焼いた牛肉の塊を、オーブンでじっくり焼き上げます。寝かせて肉汁を落ち着かせてから、薄くスライスして食べます。簡単と言えば簡単な料理ですが、時間がかかること、火入れが難しいことでも知られます。近年、日本の家庭では湯煎して作るレシピが一般的になっています。使う牛肉は、もも肉や肩肉の塊が多いようです。英国の伝統的な付け合わせとしては、ヨークシャー・プディング、ホース・ラディッシュ、グレイビー・ソースがよく知られています。

アメリカのビーフ・ステーキと言えば、サーロインとフィレ、両方の肉が楽しめるTボーン・ステーキが最上とされます。個人的に大好きなのはロースト・プライム・リブです。残念ながら、東京で真っ当なロースト・プライム・リブを食べられる店は、LA本店のロウリーズくらいのものです。よくロースト・ビーフとの違いを聞かれますが、基本的には使う肉の違い、そして厚切りで食べることだと思います。プライム・リブとは、あばら肉の中央部分を指します。脂肪分が多いので、ローストすると旨味としっとりとした食感が楽しめます。ロウリーズでは、ワゴン・サービスで好みの焼き加減とサイズを選べますが、1パウンド、少なくとも300g以上の塊で食べてこそ、ロースト・プライム・リブだと思います。

実は、NYで、ロースト・プライム・リブを知ってからは、どうも英国式のロースト・ビーフは物足りない感じがして、好んでは食べていませんでした。ただ、相原精肉店のロースト・ビーフだけは別物です。ところで、アメリカ伝統のフワフワとしたポップオーバーも大好物です。ポップオーバーは、ジャムや蜂蜜をかけて食べます。家でも何度か挑戦しましたが、なかなかうまく膨らみませんでした。ポップオーバーのルーツは、英国のヨークシャー・プディングなのだそうです。ロウリーズでは、サイド・ディッシュとして、ポップオーバーではなく、英国式にヨークシャー・プディングが供され、米国式のさらりとしたグレイビー・ソース、オージュをかけて食べます。(写真出典:hacooda.com)

マクア渓谷