サンタの赤い服はサンドブロム以前からも描かれていましたが、この広告が現在に至るサンタ・クロースのイメージを決定づけたとされます。しかし、クリスマス・カラーに関しては、はっきりしないところがあります。おおよそマス・イメージは、商業的な広告・宣伝によって形成される傾向があるので、コカ・コーラ説もあり得ます。しかし、その起源は、19世紀のアメリカで一般化した習慣にあるのではないかと考えます。19世紀前半、アメリカでは、クリスマスにツリーとポインセチアを飾る習慣が広まりました。北米のクリスマス・ツリーは、18世紀後半、ヘッセン兵が持ち込んだとされます。アメリカ独立戦争の際、英国の要請に基づきケベックに駐留していたヘッセン軍の将軍夫妻がクリスマス・パーティにモミの木を飾ったことが始まりとされます。
そもそもクリスマス・ツリーを飾る習慣は、キリスト教徒のものではありませんでした。常緑樹を生命の象徴とする文化は、古代から世界中にあったようですが、古代ゲルマン人は樫の木を信仰していたようです。3~5世紀、宣教師たちによって、ゲルマンの改宗が進められます。その際、宣教師たちは、信仰の対象であった樫の木を切り倒していきます。するとモミの木が生えてきたので、これをキリスト教の象徴とします。これがクリスマス・ツリーの起源だとされます。15世紀には、フライブルグで、クリスマスにモミの木が飾られるようになり、以降、ドイツ全域に広がり、その後、欧州各地へと伝播していったようです。クリスマス・ツリーはゲルマンの信仰をベースにドイツから始まったということになります。
一方、メキシコ原産のポインセチアは、1823年、駐メキシコ特使だったジョエル・ロバーツ・ポインセットがアメリカに持ち込んでいます。ポインセットは、後に陸軍長官にもなっています。ポインセチアは俗称ですが、彼の名前にちなんでいます。メキシコでは、クリスマスの季節にポインセチアを飾る文化があったようです。上の葉が赤くなるは冬場であり、ちょうどクリスマスに重なったわけです。ちなみに、アメリカでポインセチアが広く知られるようになったのはドイツからの移民だった育種家エッケ家の功績とされています。20世紀初頭から栽培を始め、1960年代には、お馴染みの鉢植えのポインセチアを一般化させた一族です。マーケティングの一環として、クリスマスの季節になるとTV局に無料で鉢植えを送り、認知を広げていったようです。
人間は、知覚の83%を視覚から得ているといわれます。しかも、視覚のうち80%が色彩から得る情報だと聞きます。ブランド戦略において、ブランド・カラー、コーポレート・カラーが重視される理由でもあります。世界で最も成功したブランド・ロゴとも言われるコカ・コーラのロゴには、独特の字体とともにコーク・レッドと呼ばれる赤が使われています。創業当時、コカ・コーラは、原液を木樽に入れて輸送していましたが、酒類と間違われないよう赤く塗っていたようです。これがコーク・レッドになったわけです。思うに、コカ・コーラの最も成功したブランド戦略の一つは、サンタ・クロースのイメージとブランド・カラーを紐付けたことなのではないかと思います。(写真出典:today.com)