コロナ禍で、いわゆる”おうち時間”が増えたことから、近年、ルームウェアの需要が世界的に伸びたようです。コロナ禍が一段落しても需要は落ちず、今後も拡大が見込まれているとのことです。ルームウェアの心地よさが認知されたことに加え、市場拡大とともに新商品の投入が相次いだことも影響しているのでしょう。ルームウェアの好調に押されて伝統的なパジャマ需要は減少しているではないかと思いきや、そうでもないようです。ナイトウェア市場全体が伸びるなか、パジャマも高機能化、高価格化が進み、需要も伸びているとのこと。その背景には、睡眠の質への関心が高まっていることがあるようです。厚ぼったいものを着て寝ると安眠できなないような気がするのは我々の年代だけではなかったようです。
パジャマの語源は、インドの民族服のズボンを意味する”パージャーマー”であるとされます。かつてインドに駐留した英国人が寝間着として使い始め、上下に分かれた寝間着が世界中に広がりました。パジャマ以前の欧州の寝間着は、男女ともにワンピース型のネグリジェだったようです。日本にパジャマが入ってきたのは明治維新の頃であり、洋装の普及とともに広がったようです。とは言え、昭和の中頃までは、昼は洋装でも、寝間着は木綿の浴衣というスタイルが多かったようです。その名残は今でもあって、温泉宿や一部のホテルでは寝間着として浴衣が用意されています。温泉では、食事や宴会、あるいは温泉街の散策にも着用されています。その感覚からすれば、九十九里の親子のパジャマ姿も変ではないのかもしれません。
平安以前から、寝巻きとしては帷子(かたびら)が使われていたようです。帷子とは、裏地のない着物、つまり単衣のことで、汗取りや防寒用として使われていたいわば下着です。素材は夏冬で異なったようですが、浴衣の原型と言えます。なお、寝巻きと寝間着には違いがあります。かつては寝巻きと記されていたものが、パジャマの登場以降は寝間着と記載されるようになったようです。また、浴衣は、かつて入浴の際に身につける着物を指しました。入浴の習慣は、飛鳥時代、仏教とともに伝来しています。当時は蒸風呂ですが、湯帳なるものを着用して入浴していたようです。それが平安期になると湯帷子と呼ばれるようになります。鎌倉時代以降、裸でお湯に入る入浴が一般化し、湯帷子は不要になりますが、入浴後の汗取りとして残ることになり、今に続く浴衣として普及します。日本版バス・ローブというわけです。
私は、天然素材以外のパジャマは寝心地が悪いと思っています。かつては、コットン素材オンリーでしたが、近年は、気温に応じてシルク、コットン、フランネル、重ねガーゼを使い分けるようになりました。神経質に過ぎるような気もしますが、私なりの高機能化とも言えます。最近人気の高機能パジャマには、マイクロ・カプセル等を使ったサーモ・コントロール型、あるいはセラミック等を織り込んだ疲労回復型、あるいは静電気の発生を抑えた高級フリース型などがあるようです。最先端技術を駆使しているのでしょうが、どうしても化学繊維系が多くなります。天然素材由来の高機能パジャマもあります。最高級の糸や生地を使うことで寝心地を良くしており、結構、お高いものになっています。(写真出典:britannica.com)