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チャイムのステーキ |
もちろん、昼食に蕎麦以外のものを食べることもありました。何か祝うべきことがあれば、鰻屋、寿司屋等へ行ったものです。いわばサラリーマンにとってのフェスティバル・フードです。また、その中間に位置するような昼食メニューも多くありました。その一つがステーキです。もちろん、目の前の鉄板でシェフが焼いてくれるA5ランクの高級ステーキではありません。安価なランチ・サービスです。100g強の安い肉をサービス・ステーキと称して提供するわけです。入社したての頃、スエヒロのサービス・ステーキは、ご飯・味噌汁がついて500円でした。お腹いっぱいにはなりませんが、ステーキを食べたという満足感はありました。そんなステーキ屋も、サラリーマン街には必ずと言っていいほどあったものです。
そうした大衆的なステーキ屋を、”路面のステーキ屋”、略してロメステと呼びたいと思います。B級グルメがブームとなりつつあった2000年頃に登場した”路面のスパゲティ屋”、いわゆるロメスパという言葉にあやかってのことです。近年、ロメステの店舗数は減ったように思いますが、しぶとく安いステーキを提供し続けている店も存在します。最近のサービス・ステーキの価格は、1,000円前後といったところだと思います。かつては固い肉が多かったのですが、近年は仕込みや調理も進化して、そこそこ柔らかい肉が出ます。ただ、味は相変わらずイマイチですが、そこはこっちも了解済みというわけです。ロメステでは、ソースで味を誤魔化す傾向があります。その濃いソースにハマる人も多かったように思います。
久々にロメステを食べたくなり、東銀座のビルの地下にある「チャイム」へ行ってみました。実は、初めて行く店です。通っている歯医者の近くにあって、気になっていました。10卓ばかりの小ぶりな店です。行ったのが昼時だったこともあり、5~6人ほどの行列ができていました。回転は早いはずだと思い列につきました。諸物価高騰のおり、ランチ・メニューには工夫がしてありました。豚や羊を千円程度で提供し、ステーキ・ランチはWカットと称して1600円。他に限定メニューとして、ヒレ肉やリブロースを2,000円前後で出していました。各テーブルには鉄板があり、店主がそこでステーキを焼くというやや高級スタイルです。ソースは、自分で醤油と酢と辛子を混ぜるスタイル。肉に自信があるということです。
うまい方法だと思ったのは、店内の張り紙に肉を1.5倍に増量可とありました。ついつい私もステーキ・ランチの1.5を注文してしまいました。十分に満足感を得ることができました。生き残ったロメステは、こうした工夫をしているものなのでしょう。2013年にオープンした立食いの「いきなり!ステーキ」は大ブームを巻き起こしました。食べた肉のグラム数でポイントが貯まる肉マイレージも秀逸なアイデアでした。私も、一時期、通いました。ロメステよりもやや高い価格設定ながら、多くの肉好きが”いきなり!ステーキ”に流れたものと思います。ただ、調子に乗って店舗を急拡大したことが裏目に出て、カニバリによる売上減少、従業員の教育不足によるクレームの大量発生が起き、凋落します。現在は、店舗数を大幅に縮小し、システムも変えて、細々と営業しています。実に残念。昔から大量出店による自滅はよくありました。人気が出ると、ついついやっちゃうのでしょうね。(写真出典:tabelog.com)