2024年1月1日月曜日

甲辰

2024年は、十干十二支(干支)で言えば「甲辰(きのえたつ)」です。十干の最初である甲、十二支の5番目である辰の組み合わせは、干支の60年サイクルで言えば41番目となります。干支は、中国古来の陰陽五行思想に基づきます。木・火・土・金・水が、陰と陽に分かれ、世界を回しています。 その循環の姿を現わしているのが干支です。甲は、亀の甲からきており、固い種の状態を表わすとされます。すべの始まりというわけです。辰は、草木の芽吹きからの成長が一段落し、整った状態を表わし、これから大きく成長することを示しているとされます。甲も辰も陽の気に位置づけられるので、それぞれが持つ傾向が相乗的に発現されることになります。つまり、甲辰は、大きな成長、躍進、変化の年だということになります。

60年前の甲辰、つまり1964年を見ると、まさに東京オリンピックに象徴される躍進の年でした。奇跡と言われた戦後復興から高度成長期に入った日本ですが、オリンピックを機に、新幹線、高速道路網といったインフラが一気に整備されました。その後、日本は、欧米各国と肩を並べる経済大国となり、GDPにおいては米国に次ぐ世界第2位に登りつめます。まさに、その起点となった年だったとも言えます。また、この年、観光目的での海外渡航が解禁されています。日本人の目が海外へ向き始めた年でもありました。海外では、8月に発生したトンキン湾事件を機にアメリカが北爆を開始、ベトナム戦争への本格介入が始まりました。また、ブラジルやベトナムでは、アメリカ支援のもと軍事クーデターが起きています。

さらにその60年前、1904年甲辰には、日露戦争が勃発しています。満州と朝鮮半島の権益を巡る争いでした。バルチック艦隊を打ち破った日本海海戦など華々しい戦果が喧伝されますが、実態的には、ほぼ互角の消耗戦だったといいます。ロシアは、第一革命が起きたために講和を受け入れざるを得ない状況に陥ります。日本にとっても講和は渡りに船であり、辛勝ということだったのでしょう。いずれにしても、大国ロシアを東洋の小国が破ったことは世界に衝撃を与え、懸案であった不平等条約の改正にもつながりました。日本帝国は、開国から40年を経ずして、西洋近代国家に肩を並べるどころか、非白人国としては唯一”列強”諸国入りを果たすことになりました。

さて、2024年甲辰は、世界に、日本にどのような新展開をもたらすのでしょうか。ウクライナとパレスティナで続く戦争においても、新たな展開が生じることになるのでしょう。また、今年は、大統領選の年とも言われます。米国はじめ、ロシア、インド、台湾、インドネシア等で大統領選挙が予定され、EUでは欧州議会議員選挙が行われます。選挙がトリガーとなり、各国の新展開、そして世界情勢の大きな変化が生み出される可能性もあります。三流国家への道を急ぐ日本では、解散総選挙があったとしても、野党の不甲斐なさゆえ自民党政権が継続されるのでしょう。また、確実視される自民党総裁の交代があったとしても、新たな展開が生じるとは思えません。ただ、外圧による多少の変化は起こり得ます。

経済分野でも、大きな動きは考えにくいものがあります。コロナ明けで順調に回復する企業業績をうけ、昨年の株価は大きく上昇しました。”うさぎ年は跳ねる”というジンクスを地でいった感じです。株屋の世界には「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる」というジンクスがあります。”辰巳天井”ゆえ、株価の好調は持続されるのかも知れません。日銀の出口戦略が注目され、新NISAへの期待も大きいようです。辰は龍とも表わされますが、十二支のなかでは唯一架空の動物です。なぜ架空の龍が十二支に入ったのかについては不明なのだそうです。古代中国の人々は、龍を架空の動物と思っていなかったという仮説が最も納得できます。さて、甲の辰は、昇り竜か、下り龍か、気になるところですが、いずれも吉祥であることは間違いないはずです。

マクア渓谷