2023年11月5日日曜日

Tokyo Film 2023

2023年の東京国際映画祭が、10/23~11/1、開催されました。毎年、チケットを確保することが難しく、去年は5本しか見られませんでした。今年は、システム改定もあって、比較的スムーズに9本のチケットをゲットできました。ただ、期間中、3泊4日の広島・関西旅行が入っていたこともあり、狙っていたのに見られなかった映画が2本ありました。誠に残念。うち1本が、今年、急逝したチベットのペマ・ツェテン監督「雪豹」であり、グランプリを獲得しています。


「耳をかたむけて」 ☆☆☆  監督:リュウ・ジャイン 2023年中国

スランプに陥った脚本家が、アルバイトの弔文書きを通じて知り合った女性との交流を通じて、自信を回復するといったプロットです。短編小説的な味わいのある佳作だと思います。

「平原のモーセ」(別掲) ☆☆☆☆ー  監督: チャン・ダーレイ 2023年中国 

「犯罪者たち」 ☆☆☆☆  監督:監督:ロドリゴ・モレノ 2023年アルゼンチン等

とても新しい映画の作り方だと思います。散文詩的でもありますが、実に自由な展開が、のびやかなエッセイを読んでいるような心地良さを感じさせます。銀行から金を奪った後の関係者の心理を描くというプロットではありますが、主題は、現代人にとっての自由、あるいは社会と個人という古典的テーマの現代的解釈のように思えました。

「ロングショット」☆☆☆+  監督:ガオ・ポン 2023年中国

チャイニーズ・ノワールの新しい展開だと思います。東北部の社会問題を背景としつつも、これほど銃弾が飛び交う中国映画は、戦争映画以外では初めてなのではないかと思います。主人公の影の部分の描き方も含めて、新しい中国エンターテイメント映画です。政府の検閲を通せたのは、時代とその法的背景を限定したからなのでしょう。

「ミュージック」☆☆☆☆ー  監督:アンゲラ・シャーネレク 2023年独・仏等

ギリシャ三大悲劇の一つ「オイデュプス王」をベース・プロットとしています。映画は、乾いた空気感のなかで静かなテンポで展開されますが、時折入る鋭い映像が印象的でした。ピエル・パオロ・パゾリーニのウルトラ・モダン・バージョンといった印象を受けました。峻厳さすら感じさせる映画文法は見事だと思います。

「ダンテ」☆☆+  監督:プピ・アヴァティ 2022年イタリア

ダンテ再評価の立役者として知られるボッカッチョがダンテの娘である修道女を訪ねて旅をするという興味深いプロットです。ただ、ダンテに関する解説的な展開も含めて、全体がTV番組風となっています。もう少し焦点を絞って、しっかりドラマを作った方が良かったと思います。イタリア人は、どうしてもダンテを解説したくなるのでしょう。

「野獣のゴスペル」☆☆  監督:シェロン・ダヨック 2023年フィリピン

タイトルからしてブリランテ・ドーサばりの映画を期待したのですが、社会派的ながら青春物的色合いも濃く、中途半端な印象を受けました。主演する俳優の甘いマスクが気になりました。キャスティングの段階で既にブレブレの映画だったと思います。

「アンゼルム」☆☆☆+  監督:ヴィム・ヴェンダース 2023年ドイツ

現代アート作家のアンゼルム・キーファーに関するドキュメンタリー映画です。白黒の端正な映像は、ヴェンダースの熟練の技を感じさせます。実にスタイリッシュな映画ですが、キーファーの制作意欲の根源にまで切り込んだという印象は薄く、また彫刻的でもあるキーファーの作品を考えれば、3D上映の意図は理解しますが、効果があったかどうかは疑問です。

「Somebody Comes into the Light」☆☆☆+ 監督:ヴィム・ヴェンダース 2023年ドイツ

ヴェンダースの「PERFECT DAYS」出演を機に実現した田中泯のダンス映像です。田中泯のダンス、三宅純の音楽、ヴェンダースの映像が、見事にマッチした躍動感あふれる映像でした。白黒で映し出される田中泯のダンスの迫力もさることながら、欧州を中心に活躍するジャズ出身の作曲家・三宅純の音楽が魅力的な作品でした。

(写真出典:2023.tiff-jp.net)

マクア渓谷