2023年9月22日金曜日

カノム・チャン

タイ旅行の楽しみの一つは、明らかに料理だと思います。今回、三食付きのツアーを利用しての旅でしたが、食事はどれも美味しく、はずれなしでした。一番驚いたのは”カオマンガイ”です。シンガポール名物”ハイナン・チキン・ライス” のタイ版です。カオマンガイが大人気だという”ルエントン”という店で食べました。ホテルのなかにある大きな店ですが、超満員で、かつ皆がカオマンガイを食べていました。ハイナン・チキン・ライスは好物ですが、本場シンガポールの最も有名な店でも食べたことがあるので、それを超えるとは思っていませんでした。ところが、優に超えていました。驚くほどしっとり仕上がった鶏肉、香り高いだけでなく味付けも濃いめのジャスミン・ライス、人生最高のカオマンガイだったと言えます。

タイ料理の魅力は、複雑な味にあると言われます。五味のうち、甘味、酸味、塩味、旨味を組み合わせ、そこに辛味と香りがプラスされます。さらには、ココナツ・ミルクを加えれば味にマイルドな深みが出ます。代表料理と言えばトム・ヤム・クンですが、今回はエビではなく鶏肉を使ったトム・ヤム・ガイや、ココナツ・ミルクを入れたナムコン、入れないナムサイも食べました。どれも美味しくいただきました。近年、名物として認知が高まったカニと卵の”プー・パッ・ポンカレー”も2度ほど食べました。間違いなく美味しいわけです。発祥の店はバンコクにあるので、一度行ってみたいと思います。他にも、定番のカレーにマッサマン・カレー、パッタイ、ヤム・ウンセン、ガイヤーン等々の定番も楽しみました。

一つ覚えた料理もあります。至って単純なキャベツのナンプラー炒めです。バーンパコン川に面したおしゃれな川魚の店にいった際、付け合わせとして出されたのですが、これが美味しくて、作り方を聞きました。帰国後、自分なりにアレンジして作っているのですが、簡単で美味しく、定番になりつつあります。実は、今回、ねらっていた食べ物があります。タイの庶民的な定番お菓子”カノム・チャン”です。ところが、レストランのデザートと言えば、フルーツばかりで、お菓子系は出てこないのです。ところが、ガイドに勧められたホテル近くのマンゴー屋で見つけました。ココナツ・ミルクをかけ、塩味のバスマティと一緒に食べるマンゴーも珍しいのですが、できたてのカノム・チャンには感動しました。

カノム・チャンは、タピオカ粉と上新粉に、ココナッツ・ミルクと砂糖を加えて蒸し上げたお菓子です。印象的には、ういろう、鯨餅系です。カノムはお菓子を意味し、チャンは層のことだと言います。白と緑の層が、タイではおめでたい数字とされる9層に重ねられています。ほのかな甘味、ココナツ等の風味、そしてプニュッとした食感がたまりません。東京のマンゴツリーで食べるカノム・チャンも美味しいのですが、冷えて、やや柔らかさを失っています。マンゴー屋では、出来たてだったとみえて、ほの温かく、プルプルの食感でした。カノム・チャンの作り方は、一層を蒸し上げたら、次の層を重ねてまた蒸すという、とても手間暇のかかるものです。家庭で作るよりも、買って食べるお菓子のようです。

タイのビールと言えば”シンハー”です。バンコクで飲むと、シンハーってこんなに美味しかったかな、とさえ思うわけです。ビールに限らず、土地の料理や酒は、その土地の気候に合うように作られています。すっきりと軽いテイストのシンハーも、東京ではなくバンコクで飲むべきものなのでしょう。今年の夏は異常な暑さとなり、残暑も厳しいものがあります。果たして、これは異常気象なのか、あるいは常態化するものなのかは分かりません。蒸し暑い日に、バンコクのスーパーで買い込んだインスタント食品の刺激的な辛さや酸味を味わっていると、なぜか元気が出てきます。温暖化が進むとともに、日本でも、タイ料理が、より一層、広まっていくように思えてきます。(写真出典:thailand-navi.com)

マクア渓谷